副社長は輝きを秘めた彼女を暴きたい
「那智。手出して」

私は言われた通り手を差し出した。

「違う。逆」

そして左手も出す。
絃はそっと私の手を握る。
大きな手。温かい。

「冷たいな」

そう言って私の手を大きな手で温めるように包んでくれる。

すると、そのままスッと指輪がはめられた。

「え…?」

「こっちは婚約指輪だろ。これは結婚指輪」

ジワっと目に涙が浮かぶ。

「あ、ありがとう…。嬉しい」

すると絃はもう一つ指輪を出した。

「俺にも付けて」

私は指輪を手に取り、絃の左手の薬指に指輪をはめる。
が、節々がゴツゴツでなかなかはまらなくて絃は笑っている。

もう! 私はグイグイねじ込みようやく指輪をはめることができた。

「ククククっいいな。この違和感が新鮮だわ」

そう言って絃は手を広げて指輪を眺める。
私も自分の指にはまる指輪をそっと触った。
この指輪が馴染む頃には私も絃もどうなってるんだろう。
< 244 / 264 >

この作品をシェア

pagetop