副社長は輝きを秘めた彼女を暴きたい
「え? いや…空いてたのがここだったんで」

「だってここ、エントランスはオートロックだけど、廊下の壁飛び越えたら誰でも入れんじゃん」

そうなのだ。
それは私も思っていた。
どうやら彼はセキュリティが心配のようだ。

「いやでもこれまで何もなかったですよ?」

「そうなの? 気をつけろよ。それじゃ」

そう言って、片手をポケットに入れたままウォーキングのように華麗な足取りで帰って行った。

す、凄いな。
あれ普通に歩いてるだけでしょ?

すげー。

生の先輩は、雑誌で見るよりずっと素敵だった。

副社長なんてしてるんだからどんだけお堅くなってるのかと思ったけど、案外普通だったし。

こんな私の事を送ってくれて、心配までしてくれた。

優しい人だ。

胸がざわつく。
そんな自分を無視して部屋へ入った。



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