副社長は輝きを秘めた彼女を暴きたい
〜絃side〜

彼女を送り届けて俺は車へ乗り込み、自宅へと向かった。

塩田那智か…。

彼女は俺が高3の時、図書委員をしていた1年の生徒だ。

あの頃どこで何をするにも、俺の周りというか俺たちの周りは人が群がって落ち着ける場所なんてなかった。

まぁ今も大して変わらないけど。

♦︎♦︎♦︎

昼休みにふと思いついて図書室に入ると、案の定誰もいなかった。

ラッキー。

窓側へ向かい窓を開けると春風が心地の良い空気を運んできて俺はここで昼寝をする事にした。

2週間くらいそんな時間を過ごしていると、声をかけられた。

あ、今日は家に携帯忘れたんだった。
危ねぇ、寝過ごすところだった。

ヤベ。
見つかったわ。

そう思った。

俺が落とした本をスッと拾って渡される。

その子はちっこくて、分厚いメガネに重たく長い前髪で、髪も不自然なくらい真っ黒だった。

そして目が合った。

茶色?

ついその瞳に吸い込まれそうになって俺は慌てて何もなかったように立ち上がる。

彼女は、俺に驚いた様子もなくて一瞬目が合っただけで直ぐに視線は窓に移って戸締りをし始めた。

だから俺も特に話しかけもせずすぐにその場から離れたのだった。
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