君との約束

映画公開の初日挨拶

 映画『夏の終わりに』の公開初日。
 公開初日の挨拶に立つ伊藤監督、
唯、季里也、水月他スタッフ陣。

 そして、主題歌を担当した『RAIN』の五人
が登場すると観客席からは、黄色い歓声が上がる。
 眩しいくらいにたかれるフラッシュの光。

 司会のアナウンサーより、監督と出演者の
紹介が始まり、出演者一人ひとりがコメント
が話された。

 舞台挨拶は順調に進行され、話題は映画の内容、
見どころから『主題歌』を担当した『RAIN』
へと移った。

 「今回、初めて映画の主題歌を担当された
とういうことですが、どうですか?」
 と司会のアナウンサーが質問する。

 「そうですね、僕らも初めてのことで
色々と悩みましたね。
 いつもの、曲調とは異なるラブソング
ということで……」と友が答えた。

 「この曲の歌詞に共感する人が急増してると
評判なんですが、作詞を手掛けた悠さん、
この歌詞はどういった想いを書かれたのですか?
 改めてお伺いします」

 「え~と、これは、今すぐにでも会いたい、
だけど会うことができない。
 でも少しの時間だったとしても
好きな人に会えた瞬間に込み上げてくる抑えきれない
想いを書いてみました」

 「キャ~悠」と歓声が起こる。

 「そうですか。本当に素敵なラブソングですね。
 映画にマッチしていて、ありがとうございました。
 それでは、初日公開を記念して『RAIN』の皆様に
生で歌っていただきたいと思います」
 とアナウンサーが言うと、会場から大歓声が起こった。
 ステージ上のスタンドマイクの前に立つ
『RAIN』の五人、主題歌『夏の雨』を歌い出した。

 いつものアップテンポの曲とは真逆のしっとりとした 切ないラブソングを歌い上げる『RAIN』の五人。
 
 サビの部分で悠が、

『僕がここに来たのは……
  君の瞳を見たかったから……
  君の瞳で僕を見つめてほしかったから』

と切ない声で歌い上げる。

 悠の甘く切ない声を聴いた客席からは、
ライブさながらの拍手と歓声が起こった。

 季里也の隣で悠の歌声を聴いた唯、
目の前で歌う悠の姿に
優しく見つめる彼の瞳を思い出すと、
下を向き小さく頷いた。

 唯のそんな姿に優しく視線を送る
季里也の表情。

 パシャリ、パシャリ……
悠と季里也のそんな光景を撮影する
記者が押したシャッター音は、
場内の歓声にかき消されてしまうのだった。
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