君との約束
向かい合って座り食事をする悠と唯。
「なんか、あの日以来だね」
「はい、この世界に入ると決めたことを
悠さんに報告した日以来ですね」
「なんか、昨日のことのようだね」
「はい。この一年半、全力で走ってきたから、
あっという間でした。あっ! そう言えば……」
「何?」
「映画、映画の感想を聞きたくて……」
「あ~、映画の感想ね?」
「はい、どうでしたか?」
「凄くよかったよ。
思わず俺、キヌコさんと共演したいって
思ったもん。それに……」
「それに?」
「う……ん 俺、無意識に俺だったら、
こう演じるのになんて考えてたりしてた。
でも正直、季里矢に……嫉妬したかな?」
「嫉妬? 悠さんが? 何で?」
「さぁ~ね。それよりさ、俺たちの曲は
どうなの? 気に入ってくれた?」
「もちろん、素敵な曲」
「届いたかな? 俺の想い……」
「えっ? 俺の想い?」
「う~ん、キヌコさんそんなところは
相変わらずなんだな……」と呆れ顔の悠。
「キヌコさん、ドキドキとかしないの?」
と悠が聞いた。
「私だって、ドキドキぐらいしますよ」
唯が即答する。
「例えば? どんな時?」
「例えば今とか……」
唯が下を向いた。
唯の言葉に少し驚いた悠だったが、
椅子から立ち上がると、唯の傍に歩み寄った。
座っている唯が悠を見上げた。
悠はテーブルに片手を置くと、
唯を見下ろし彼女の目を見つめる。
唯は一瞬悠から視線を逸らしたが、
再度悠を見上げた。
悠は、唯の目を見つめると、
そっと、自分の唇を唯の唇に重ねた。
悠の唇が唯の唇からゆっくりと離れる。
「ごめん。これが、俺の気持ち」
と悠が呟いた。
悠を見上げた唯の両手が彼の首にそっと触れた。
唯も椅子から立ちがるとそのまま悠に抱き着いた。
「私も……これが今の気持ちです」
というと悠の胸に自分の耳を押し当てた。
トックン トックンと聞こえる悠の鼓動、
目を閉じて悠の鼓動を感じる唯。
唯は心が穏やかになっていくのを感じた。
悠は、そんな唯を優しく包み込む。
ふたりの想いが通じ合った瞬間(とき)
ふたりの関係が、変わっていく……。