君との約束
第三章

すれ違いのはじまり

悠と唯は相変わらず多忙な日々を過ごす。
ふたりの会えない日々が続く。

唯の撮影現場に雅社長がやって来た。
「唯、頑張ってる?」と微笑む雅。
「はい、社長」と答える唯。

そこへ、季里矢がやって来た。

「お疲れ様です、雅社長」
と挨拶をする。
「季里也君、お久しぶり。
 すっかり、唯とのコンビも
 板についてきたわね」

「ははは……そうですかね?」
 と笑顔で返す季里也。

「たまには、二人でお茶飲んだりしないの?
 食事とか」と雅が聞いた。

「唯ちゃんと二人でですか? ないですよ。
そんなことしたら田代さんや雅社長から
 怒られるでしょ?」

「そんなことないわよ。季里也君なら……」
「えっ?」と季里也が驚いた顔をした。

「そんな、深い意味はないわ。
 そうだ。
 今夜皆で食事に行きましょうよ。
 いいお店があるの」
 と言うと雅は唯のマネージャ―の
 田代に店を予約させた。

その日の夜、撮影を終えた唯、季里也が
田代と季里也のマネージャ―と一緒に
雅が待つ店にやって来た。

雅を含めた五人は席に着く。
料理を待つ間、
現在撮影をしている作品の話で
盛り上がる。
そして、美味しい料理が次々に
運ばれて来た。

「唯ちゃん、これ美味しいよ」
と季里也が言った。

「本当だ。美味しいね」
と美味しそうに食べる唯。

二人の姿を見ていた雅。

「あなたたち、本当に絵になるわね。
 本当の恋人同士みたいね。
 流石!理想の恋人同士」と言った。

「そんなこと、ないですよ。
 役のイメージですよ」
 と恥ずかしそうに唯が言った。
 
 唯の言葉を聞いた季里也、
「俺は、そんなことはないけどな」
とボソッと呟く。

「ん? 何?」と唯が聞き返した。

「何でもないよ……」
というとグラスに注がれたビールを
飲み干す季里也。

「そう言えば、ちょっといいかしら?」
雅社長が田代と季里也のマネージャ―を連れて
席を外した。

二人きりになった悠と季里也、

「唯ちゃん、疲れてない?」
 優しく声をかける季里也。

「私は、大丈夫。今のところ
 ちゃんと寝てるし……」

「そうか、俺等、最近、
 超多忙だからね。
 でも、ほぼ毎日一緒にいるから
 二人でセット的な、
 少し前からすると信じられないよね」

「うん。まさかこんな状況になるなんて
 あの頃は想像もしてなかったからね」
と唯が季里也の顔を見て微笑んだ。

カシャリ……。
季里也が微かな音を耳にした。

「ん?」と季里也が唯の顔を見た。
「どうしたの?」と唯が聞いた。
「えっと、今ね……」
と季里也が答えようとしたその時、

雅社長と二人のマネージャ―が席に
戻って来た。
「唯、季里也君、席外してごめんなさいね。 
 あっ! もうこんな時間じゃない。
 あなたたち、二人明日も撮影でしょ?
 そろそろ帰りましょうか」
と言うと、五人は食事を終わらせた。

「雅社長、ご馳走様でした」
とお礼を言うと季里也とマネジャーが
帰って行った。


「雅社長、ご馳走様でした。
 お疲れ様でした」
唯も雅にお礼を言うと
田代が運転する車に乗り込んだ。

「お疲れ様」と唯を見送る雅。

バッグからスマホを取り出すと、
電話をどこかに電話をかけた。
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