君との約束

 EVが一階 ロビーに到着した。
 EVから悠が降りてくると、
マネージャ―の江口が待っていた。
 二人は、江口が運転する車に乗り込む。

 「話は終わったのか?」
 運転席の江口が助手席に座る悠に聞いた。

 「ああ……っていうか、江口さんも
知ってるんだよね? 全部……」

 悠は、社長室で話した内容を江口に話した。

 「そうか。俺も昨日うちの社長から呼ばれて。
 週刊誌の記事を入れ替えることを全部聞いたよ」

 悠は、江口を睨んだ。

 「悠……何、イラついてるんだよ。
 YUIちゃんとは何でもないんだろ?
 それに、季里也にも協力してもらうんだからさ」

 「季里也に協力? 何のこと?」

 「記事を入れ替える件で、社長が季里也に事情を
話してる。
 季里也は唯ちゃんとの記事のこと快諾したとのことだ。
 『尊敬するRAINの悠さんのためなら』って……」

 「事情……事情って何だよ?」
 と語気を荒げる悠。

 「だから、『RAIN』の悠に、色恋沙汰とかあると
面倒だろ?
 それに『RAIN』にとってもおまえにとっても、
大事な時期にスキャンダルとかあり得ないからな」
 と言うと江口は車を発進させた。

 
 「あれ? 悠は、まだ来てないの?」
 と『RAIN』メンバーの心が言った。
 
 ここは、『RAIN』が所属する事務所ビル内の会議室。
 今日は、新曲のPV撮影の打ち合わせにメンバーが
集合していた。
 
 「あ~、悠なら、さっき江口さんと
  社長室に入ってたよ」と良が言った。
 
 「ふ~ん。何だろうね?」
  翼が不思議そうな顔をした。
 
 「新しいピンの仕事のことなんじゃない?」
 とリーダーの友が言った。

 社長室に入って行った悠と江口、
「社長、この度はご迷惑をおかけして
 申し訳ありませんでした」
 と頭を下げる悠。

「雅社長とも話をして聞いた通りの対応を
することになった。
 先方も、季里也との記事ならイメージ的に
特に問題はないとのことで」
 と社長は悠の肩に手を置いた。
 
 そして、
 「悠……このことは、メンバーには話さないでくれよ。
 これは、俺とおまえと江口と季里也四人の秘密だ。
 みんなにも心配と迷惑をかけたくないだろ?」

 社長の言葉を聞いた江口が
 「悠……わかったな?」と言った。

「はい、わかりました」
 と言うと悠は社長室を出て行った。

 廊下の壁を叩く悠、
「何で……」と言うと唇を噛みしめた。
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