君との約束
唯のマンションの前に停まる
一台の車の中から唯が降りて来た。
「お疲れ様でした」
運転席からマネージャ―の田代が降りてくると、
「大丈夫か?」と唯に声をかける。
「何がですか?」
「その……昼間に社長が言ったこととか……」
「ああ、それなら大丈夫ですよ。
それに、社長の言われることもわかってますから」
と笑顔で言うと唯はマンションの中に
入って行った。
唯の部屋のドアが開いた。
廊下を歩きリビングに入る唯、
白を基調とした唯の部屋、部屋の中央に置いてある
白いダイニングテーブルの上に悠から贈られた
台本ケースを置くと、椅子に座りテーブルの
上に肘をのせ溜息をつく。
唯の目から涙が流れ落ちた。
涙は後から後から流れ落ちる。
唯は両手で涙を拭う。
唯は声も出さず、人知れず泣いた。
悠を好きな気持ちと、会えない辛さと、苦しい気持ち。
平静を装って笑っていなればならない現実、
すべてが唯にのしかかる。
「あ~、もうだめかも」と唯が呟いた。
ブーブーブーと着信音が響いた。
悠からの電話、
唯はスマホを手に取ると画面を操作した。