君との約束

苛立ち

 悠・季里也・『RAINのリーダー』友、
三人の男性から想い寄せられている唯。

 当然、季里也と友から想われていることを
知らない唯は今日も仕事に全力を注ぐ。

 休憩時間、唯のイヤフォンからは、
『RAIN』のダンスナンバーが流れる。

 プロデューサーが
「YUIちゃん、『RAIN』好きなの?
 よく聴いてるみたいだね」と聞いた。

「はい、以前映画の主題歌担当して
いただいたことと、季里矢君の
事務所の先輩ってことで。
 聴くようになったっていうか……」

「あ~、やっぱり彼氏さんの影響?
 好きな人の聴く音楽って自分も
聴きたくなるもんね」

「彼氏の影響って……違いますよ。 
 それに、そんな言い方好きじゃない」

「あ、ごめんねストレート過ぎたね」
 と謝るプロデューサー。

「……」顔を横に向け無言になる唯。

「あ、YUIちゃん、怒っちゃった?
 深い意味ないんだからさ。
 ほら……もし、YUIちゃんが
希望するなら、『RAIN』との対談とか
企画してもいいよ」

「……」何も言わない唯。

「どうかしましたか?」
 と唯のマネージャ―の
田代がプロデューサーに声をかけた。

「僕が、余計なこと言っちゃって
怒らせちゃったみたいんだ」

「え? YUIが怒りました?」

「それが、僕が YUIちゃんの彼氏の
季里也君の名前を出したから、
ちゃかすような感じにとられてしまったみたいで。
 僕は、悪気はなかったんだけど……」
 
 プロデューサーの言葉を聞いた。
 田代は横を向いた唯の顔を見ると、
 「大丈夫ですよ。
  気にされないでください。
  それより、今後とも
 YUIを宜しくお願いします」と言った。

 「ああ、こちらこそよろしく」
  プロデューサーは苦笑いをすると、
 その場を去った。

 顔を横に向けたままの唯、
 田代が優しい口調で唯に話しかける。
 
 「唯ちゃん、今は仕方ないだろ……」
 
 「仕方ないって、わかってますけど、
でも、あんな言い方しなくても……」
 と涙目になる唯。
 
「ほら、メイク崩れるから泣くんじゃない」

「わかってますよ。それくらい」
 と唯は口を尖らせて言った。

 イヤフォンからは、『RAINの曲』
が流れ続けていた。
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