君との約束

 「悠、と言うわけだ」
と江口が悠に何かを伝えた。

 「それって、本当ですか?」悠が聞いた。

 「本当だ。先方からも正式に許可がおりた」
 いい作品にしろよな。事務所も全面的に
宣伝するからな。
 どうだ! 話題性ばっちりだろ?」

 「はい。俺、頑張ります」
 悠は満面の笑みを浮かべた。


 「唯、この仕事受けたから。
 いい作品にしてちょうだい」
 と雅社長が言った。

 「はい」と唯が微笑んだ。


 「YUIちゃんが? そうなんですか」
 と呟く季里也。

 「悠が……」と呟くと、
友は事務所内に飾ってある悠のボスターを見つめた。

 「YUIさん、入られます」
 とスタジオ内に声が響くと
唯がスタジオ内に入って来た。

 「YUIさん、久しぶり、よろしくお願いします」
 と『悠』が言った。

 ニコッと微笑んだ唯、
 「こちらこそ。よろしくお願いします」
 とお辞儀をした。

 今日は、ソロ活動を始めた『悠の新曲第一弾』の
プロモーションビデオ(PV)撮影日。

 唯は悠のPVに出演することになったのだ。

 唯と悠の共演を極力避けていた雅社長であったが、
例のスペシャル対談の際の企画の反響の大きさと
『悠とYUI』のツーショット写真のダウンロード数が
物凄く世間からの注目度もあがっていることもあり、
二人の共演を観てみたいと熱望する人々からの要望に、
応えたかたちとなり実現したのだった。

 しかし、『YUIと悠の共演』に一部の『季里也ファン』
からは、『季里也を裏切った』などと言い出す人も
後を絶たなかった。
『季里也派』と『YUIと悠派』に別れていることを
連日報道していた。

 撮影の様子を見に来た唯、メディアの記事に
目を通すと、
 「凄いわね~この反響の大きさ」
 と田代に言った,

 「そうですね。YUIちゃんもこれには困ってる
みたいですね。
 二股とか言うファンもいるみたいで……」

 「まぁ、これも彼女が人気者の証拠……。
 でも、このPVで……
 今までのことは皆が忘れ去るくらいな
ものになるといいけど……」
 と雅が言った。


 監督より、PVの設定を聞かされる唯、
 「YUIちゃん、緊張しないで楽にいこう!」
 と悠が優しく声をかけた
 「はい……」と唯も元気に返事をした。

 悠と唯のPV撮影が始まった。
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