君との約束
第八章
『千春大好き』
「も~びっくりしたよ」
唯に声をかける親友の千春。
ここは、唯のマンション。
唯が倒れたことを聞きつけ千春が駆けつけてきたのだ。
「千春……ごめんね。心配かけて」
ベッドに寝ている唯が言った。
「まったく! 多忙極まる女優さんってのはわかるけど、
自分の身体の限界を知らないとこんなことになる
んだよ!
マネージャーの田代さん? 俺は男性だからお願い
できますか? って言われて、唯、入院拒否したんだってね、まぁ、私が緊急連絡先になってたからね」
と口を尖らす千春。
「ごめん。もう、心も身体もいっぱい、いっぱいで……」
と涙を流す唯。
「唯……」
「千春~」と抱き着く唯。
千春は唯の頭を撫でながら、
「よし、よし、何か作るよ。
どうせ、食べてないでしょ?
少し瘦せたんじゃないの?
栄養つけてさ、数日安静にしてたら大丈夫って
お医者さんも言ってたそうだよ。
リフレッシュ リフレッシュ!
私、買物行って来るよ。それまで、少し眠りな」
と言うと千春は寝室のドアノブを握ると、
「ごめんね、唯……近くにいてあげられなくて。
唯がここまで追い込まれていたって気づいてあげられ
なくてごめん」
と言うと千春は買い物に出かけて行った。
そして、数時間が経過した。
トントントン グツグツグツ
シャーシャーシャーと料理をする音が聞こえて来た。
ベッドの中で唯が目を覚ました。
「よく寝たな~ ん? いい匂い……」
唯はベッドから起き上がるとパジャマ姿でキッチンに
歩いて行った。
唯に気づいた千春、
「ほら、寝てなきゃ、だめだめ」
「眠ったら、すっきりした」
と両手でガッツポーズする唯。
唯のそんな姿を見た千春は
「だめだって・・寝てなさい!」
と言うと唯を再び寝室に連れて行くとベッドを指差し、
「はい、ごはん出来るまで安静に寝ててください!」
と言った。
「は~い わかりました」と言うと
唯はベッドに横になり身体に布団をかけた。
ベッドの中で唯は、親友、千春の気持ちが
とても嬉しかった。
コンコンコンと寝室のドアを叩く音がした。
「唯?」千春がトレイにお皿やお椀に注がれた料理を
運んで来た。
「はい、どうぞ。味は保証できないけど」
唯は起き上がり、ベッドサイドに座ると千春が運んで
きた料理を見て、
「わぁ~美味しそう。いただきます」
と言うとお椀に注がれたお味噌汁を一口飲んだ。
「美味しい……」と呟く唯。
「そう? よかった。昔、作り方、唯に習っといてよかったよ。こんなかたちで実践するとは思わなかったど……」
と嬉しそうな千春。
「自分のために作ってくれた料理を食べるのってこんなに心が穏やかになるんだね」と唯が呟いた。
「何? なんか言った?」
「ううん、何でもないよ。美味しい」
と笑顔を見せる唯、
唯の笑顔を見た千春も安心したような表情をみせた。
唯は、悠と出会った頃のことを思い出していた。
悠さんも、こんな気持ちで私の料理を食べてくれてたのかな?
あの頃が懐かしい……。
悠さんに……会いたい。
心の中でそう思う唯であった。