君との約束
  葉月は話を続ける。
 「共演NGになった期間があって、会いたいって何回も 思ったけどその期間、相手役が色々な人に変わっても
彼への想いが積み重なっていって、それが結果的には
私と彼の役者としての『芝居の幅を広げたことに繋がったの……』」

 
 「唯ちゃんの好きな人というか……恋人って
業界人でしょ? それも有名な人」

 「えっと……それは」返事に困る唯。

 葉月は微笑むと……
  
「何となくわかっちゃうんだよね。
 唯ちゃん、私と似てるところあるから。
 今は、忙しくて会えなかったり、すれ違いだらけかもしれないけど、きっと二人のことは、『作品が繋いでくれる』。   
 そして、『離れていた時間は二人の距離感を絶対なもの』にしてくれて、『ふたりに成長の機会』を与えてくれると思うから」

 「『作品がふたりを繋いでくれる』
 『離れていた時間は無駄じゃない』
 『役者として成長させてくれる……』
 葉月さん、ありがとうございました。
 心の中の迷いが晴れたような気がします」
 と明るい声で話をする唯。

 「よかった。少しでも参考になって」
 「え?」と呟く唯。
  
 「あ~、伊藤監督から、唯ちゃんが悩んでるみたいだから話を聞いてやれって連絡が来たの。
 多分雅社長から相談されたんじゃないかな?」

 「そうだったんですか」
  
 「あ、でも、あの二人には気をつけなさい」
  
 「気をつける? 何をでしょうか?」
 と不思議がる唯……

 「あなた、伊藤監督の『秘蔵っ子』って呼ばれてるん
だよね?
 ある日突然、共演の話が来るかもよ。
 監督そんなことをする人だから、
 『唯ちゃんが好きなその彼』と……。
 
 案外、『最初から目をつけられてた』みたいなこと
あるからね……。
 とにかく……唯ちゃん、無理せずに自分を信じて
頑張って」

 と言うと葉月は席を後にした。

 「葉月さんら、カッコイイな。
 私も将来あんな女優になれたらいいな」
 と葉月の後ろ姿を見送る唯であった。
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