君との約束

優しい眼差し


 悠と友は用意された椅子に座り
撮影の様子を見学する。

 先程までの表情とはと異なり、唯と季里也の
表情は、同期のふたりから『恋人同士』の
ふたりへ変化する。

 季里也の唯を見つめる切なそうな表情。
 思わず抱きしめたくなるような唯の表情。

 季里也が唯を追いかけ手を掴む、
唯が掴まれた手を払いのける。

 見つめ合う季里也と唯、すると季里也が唯を
抱きしめる。

 本物の恋人同士に見えるふたりに息を飲む悠と友。

「カット~場面チェンジします」
 と声がかかる。

 唯と季里也が友と悠の元にやって来た。
「いや~、お二人がいると緊張しちゃうな」
 と季里也が言った。

 「そうか? そんなふうには見えなかったぞ」
 と友が言った。

 用意された椅子に座る唯と季里也、
スタッフが珈琲を運んで来た。
 珈琲を一口飲んだ友は、唯に話しかける。

 「YUIちゃん、良かったよ。
 俺、キュンキュンして見てた」
 「友さん、ありがとうございます」
 いつも冷静なリーダーの友の様子に少し驚く悠。

 「友さん、事務所の方が
来られてますので、こちらに」
 とスタッフに声をかけられた友が席を立つ。

 「季里也君、衣装の件で……」
 とスタイリストから呼ばれる季里也。

 唯と悠が二人きりになった。
 「悠さん、お久しぶりです……」
 と唯が言った。

 「久しぶり。俺もキヌコさんに会えて
よかったよ。元気だった?」
 と悠が微笑んだ。

 「はい。元気ですけど……毎日
時間に追われてます。今日も……」

 「緊張してたもんね」と悠が呟いた。
 「え……悠さん、わかってたんですか?」
 「そりゃ~わかるよ。 顔見てたら……」
 悠の言葉を聞いた唯は下を向いてはにかんだ。
 唯の横顔を見た悠も微笑む。

 「キヌコさん、今日ね……
俺がここに来た理由なんだけど」

 「曲を創るためのイメージを知るため
なんじゃないんですか?」

 「それもあるんだけど、俺がここに来たのは、
キヌコさん……俺の瞳見てよ」
 と悠が呟いた。

 「えっ? 悠さん?」
 「少しだけでいいから見て」
 と悠が囁く。
 
 唯は悠の瞳を少しだけ見つめた。

 「キヌコさん、俺の瞳の中にキヌコさんは映ってた?」
 と優しく聞く悠。

 「はい。映ってました……」と呟く唯。

 「よかった。キヌコさん、俺が今日ここに来たのは
キヌコさんの瞳を見たかったから。
 そして、キヌコさんの瞳で俺を見つめて
ほしかったから」
 と悠が優しい瞳で話しかけた。

 「悠さん……」と照れた顔をする唯。
 悠が唯に言った。
 「俺、これで、最高の曲が創れるよ。
 ありがとうね……」

 優しく微笑み合う悠と唯、この雰囲気に懐かしさを
覚えるふたりだった。


 その様子を遠くから見ている伊藤。

 事務所のスタッフと話している友の視線が
ふたりへと動く。
 スタイリストと話す季里也の視線もふたりへ動いた。

 この時、三人の眼差しは悠と唯に注がれていた。
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