君との約束
第十一章

オールアップ、そして

 最後のシーン撮影のためにペンションの
バルコニーに移動した悠と唯。

 夕陽が傾く頃を狙って撮影開始するために
スタンバイをするふたり。

 夕陽が西に傾き出した。
悠と唯が向き合ってスタンバイをする。
 「本番いきま~す」スタッフの声が聞こえた。

 悠が唯の耳元で囁いた。
 「どんなことがあっても芝居止めないで」
 「えっ?」
 「カメラ……アクション」と声が響いた。

 唯の前に立つ悠が優しく微笑んだ。

 夕陽が悠の後ろから差し込んできた。
 悠が唯の目を見ると、

 「覚えてる? 俺と交わした約束」
 と唯に聞いた。

 「覚えてるよ。いつか、必ずあなたの目の前に
立つという夢。
 それが、今 叶った。
 ずっと私を待っててくれてありがとう」
 と唯が言った。

 「辛いこと、苦しいことが沢山あったな。
 今日までよくがんばったな……」
 と悠が声をかける。
 
 悠の言葉に唯の脳裏に悠と出会ってから、
女優になるまでのことそして、女優になってからの悠との記憶が蘇る。
 唯の目からは、自然と涙が流れた。

 悠は、涙を流す唯に近づくと、頬をつたう涙を拭い彼女を抱きしめた。

 「俺の前に来てくれて……ありがとう。
 出会ってくれてありがとう。
 もう、俺の傍から離れないで……」

 悠の瞳に映る唯、唯の瞳に映る悠。

 ふたりは、互いの唇を重ねた。

 夕陽が二人を包み込み、
ひとつになって映る影が長く伸びていく。

 「監督……なんかさっきからセリフが違うんですけど」
 と助監督が言った。

 「いいんだよ。これで」と伊藤が微笑んだ。

 互いの唇が離れると、見つめ合う二人。
 悠が唯に「結婚しよう……」と呟いた。

 驚いた唯だったが、満面の笑みを浮かべる唯の顔と
優しく微笑む悠の顔がモニターに映し出された。

 「カット~ はい、オッケイです」
 現場に響き渡る声。

 「悠さん、YUIさん、オールアップです」の声と共に
二人に花束が渡された。
 
 沢山のスタッフから拍手を贈られる悠と唯。
 伊藤監督が二人の元へやって来て、
 「おめでとう……最高の作品になったぞ。
 この作品は二人の代表作になる」
 と嬉しそうに言った。

 悠と唯は顔を見合わせると笑顔で、
 「監督……ありがとうございました」 
 と言った。

 こうして、数ケ月にわたった撮影が終了した。
 
 二人の姿を見守る季里也、水月、友……
 「季里也ふられちゃったね」と水月が言った。

 「いいんだよ。俺は……あんなの見せられたら
もう張り合う気力もなくなったよ」

 「ふ~ん、じゃあ、私が代わりに恋人になって
やろうか?」と水月が言った。

 「え?」と驚く季里也
 「冗談よ……」水月が笑う。
 「考えておくよ……」
 と季里也が水月を見て微笑んだ。

 「俺も、また新たな出会い探さないとな」
 と友も呟いた。

 こうして、『悠と唯の共演映画』が完成した。
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