恋はレモンのように
第三章

寝不足と恋バナ

 次の日の朝、
 恭介から突然の告白に夏は、
一睡もできず朝を迎えた……。
 
 うつろな目で、半分寝ぼけ顔の
夏は自宅の玄関を開け、学校へ向かう……。

 「あれ? 寝不足かい?」
 隣の玄関から葉山が出て来た。
 「あっ、葉山先生、おはようございます~」
 うつろな目をした夏を見た葉山……
 「お? 夏~、どうした? 
 その死んだ魚のような目は……」
 葉山の言葉にハッとした夏が、
慌てて葉山に話かける。

 「ちょっと、先生! だめじゃないですか。
名前の呼び捨ては……。誰かに聞かれたら、
変に誤解されて疑われますって……」
 周りをキョロキョロと見渡す夏、
周囲に誰もいないことを確認すると
安心した顔を見せた。

 「どう? 目が覚めただろ?」
 「ちょっと、先生、わざとなんてひどいな~」
 
 「俺だってわかってるよ。教え子の隣に一人で
住んで、その教え子とは昔からの知り合いだって、
格好の話のネタになるし、餌食になるだけさ……
だから、二人っきりのときだけだろ? 夏のことを
『夏』と呼ぶのは……」

 「そうですとも。そうですとも!
 もちろんそうですとも……」
 
 「完全に目が覚めたみたいだな……
夜更かしもほどほどにしなさい。わかりましたか?
上野さん……」
 葉山が教師モードになった。

 二人の前方から、ひとみが走って来た。
 「夏、おはよう……あっ! 葉山先生も
おはようございます」
 ひとみが葉山に会釈をした。
 「はい、村尾さん、おはようございます」
 優しく微笑む葉山……
 ひとみにそう返答すると、葉山は一人
先を歩き出した。

 「あれ? 恭介は?」
 夏がひとみに聞いた。
 「あ……恭介君は、今日用事があるから
先に行くって……用事ってなんだろうね……」
 「そ、そうだね~。なんだろうね? 用事って」
 オドオドした口調になる夏……。

 「それよりさ、昨日どうだったの?
 川内部長との美術館……」
 「あ~、うん。昨日は色んなことが
あり過ぎて……まさか、夜中までとは……」
 夏が呟いた。

 「ん? 何? さては、なんかあったな~」
 ひとみがニヤリと笑った。
 「ありすぎ……だよ。お陰でこっちは寝不足」
 

 夏とひとみはいつもの通学路を歩いていく。

 最悪な人との再会……
 部長との美術館……
 そして、幼馴染の恭介からの
深夜の突然の告白……
 
 夏の周りが急に慌ただしくなってきた。
彼女がそのことに気づくのは、まだまだ、
先のこと……

 恋に憧れる、女子高生……
 今日も親友との恋バナに
 ワクワクドキドキ……。
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