恋はレモンのように
 昼休み……屋上でお弁当を広げる
夏とひとみ。
 「ねぇ、夏、恭介君、今日は近寄って
来ないね~。いつもならこの時間、
女子から逃げ回る目的で我らのところに
一目散にやって来るのに……」

 「そうだね~。彼は学校一のモテ男だから、
そろそろ、現実を受け入れてきたりして……」
 「あ~、そういうことか。たまには、
女子にもサービスしないとね……」
 変に納得するひとみ。

 「ところで、夏、昨日の出来事を報告してよ」
 「う~ん。わかったよ。じゃあ、耳貸して……」
 「なんで、ヒソヒソ話なの?」
 「いいから。耳貸してよ……」
 そう言うと夏は、ひとみに昨日の出来事を
話始めた。

 「え~、え~、何それ……」
 驚き大声を上げるひとみの口を慌てて手で
抑える夏……。
 「ちょっと、ひとみちゃん、驚き過ぎ……」
 「これが、驚かずにいられるものですか……
あの、失礼な学芸員に再会して……川内先輩からは
絵のモデルをしてほしいと頼まれ、
あげくの果てには学校一のモテ男、
恭介君からの愛の告白なんて……凄い!」

 「お陰で、こっちは、どっと疲れて、
寝不足だし……もうどうしたものか……」
 深い溜息をつく夏……。

 「夏に、モテ期到来か~。くぅ~! 
で、上野夏さん、あなたは、誰を
選ぶのでしょうかね?」
 ニヤニヤが止まらないひとみ……。

 「誰を選ぶって……。そんなのわかんないよ。
失礼な学芸員は問題外として、部長は、今まで
部長としてしか見てこなったし、恭介は、
幼馴染としてしか見てなかったから、好きとか……
そういう感情がどういうものなのか……
わかんないよ」

 「あ~ん、そういうことね……。
まぁ、無理もないか。
身近にいた人からの突然の告白だからね、
戸惑うよね。
でもさ、でもさ、モテ期到来の夏にとって、案外、
また、候補者が現れたりして……キャ~」

 「キャ~、ひとみちゃん、モテ期って……。
キャ~、ひとみちゃん、私どうしたらいいのかな?」

 「コホン、とにかく、じっくりと
『恋を見極める』ことが重要だね。」

 「恋を見極める? 私に出来るかな?」
 「できるよ~。先ずは、川内先輩からよ!
夏、モデルの件は引き受けなよ!」
 「う…うん、わかった。で、恭介の方は?」
 「それは……まぁ、ボチボチと……」
 「じゃあ、それで、頑張ってみる! 
ひとみちゃん、ありがとう!」
 夏がひとみの手を握りキラキラした瞳で
お礼を言った。
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