恋はレモンのように

放課後

 放課後の美術室……。
「あの~、上野夏いますか?」
 その声に、美術部員の女子たちが、
一斉に振り向くと学校一のモテ男
梶本恭介の出現にザワついた……。
 
 部室内のザワザワに気づいた部長の川内、
 恭介のもとに近づくと、
 「上野さんに用事? 彼女、今、葉山先生と
中庭横の倉庫に備品を取りに行ってるけど……」
 「そうですか……。じゃあ、俺そっちに
行ってみます。じゃあ」
 恭介は川内に軽く会釈をすると、歩き出した。

 「梶本君……」
 川内が恭介を呼び止めた。
 振り返った恭介が、
 「何ですか?」
 と言った。

 「君、いつも上野さんといるよね?」
 「あっ、はい。夏とは幼馴染なんで」
 「へ~、幼馴染なんだ」
 「はい、ガキん時からずっと一緒ですね」

 「その、梶本君は、上野さんの好きな人とか
知るわけないよね……。誰か気になる人とか
いるのかな?」
 「あ~、それは、どうですかね?」
 「そうだよね、幼馴染でもそいういうことは
知るはずないよね~。ごめんね、変なこと聞いて」

 「いいですよ。別に……そう言えば先輩、
夏に絵のモデル頼んだんでしょ?」
 「あ、ああ、そうだけど。上野さんから
聞いたんだ」
 「はい、昨日の夜中に……」
 「夜中に?」
 「はい……。俺等、夜中に色んなこと
話すんですよ」
 少し驚く川内を見てクスッと笑うと恭介は、
 「じゃあ、俺、倉庫に行ってみますね。
 先輩、部活頑張ってくださいね!」
 と言うとその場から歩き去った。
< 14 / 84 >

この作品をシェア

pagetop