恋はレモンのように
脚立の下に落ちた段ボール、
そして、箱から飛び出した美術教本の数々……。
その光景を見た恭介は、思わず夏と葉山の
もとに駆け寄ってきた。
「先生、どうしたんですか?
何かあったんですか?」
「あ~ん、たった今、上野さんが
脚立から落ちたんですよ……」
「脚立から落ちた? 夏大丈夫なの?」
慌てる恭介に夏が、両方の掌を軽く
前後させながら、
「大丈夫だよ。先生が守ってくれたから」
と言った。
「そう……よかった」
安心した顔をする恭介……。
「ところで、梶本君こそどうしたですか?
こんなところに来るなんて……」
「あ……、イヤ、その、夏……上野さんに
用事があって……」
「ふ~ん、さっそく実行してるんですね。
正直でいい子だ……」
葉山が恭介に言った。
「実行? 正直?」
夏が二人に聞いた。
「あ、いや、なんでもないよ。今日部活済んだら
一緒に帰ろうと思って……。だめかな?」
「べつに……。いいけど」
「そうか、じゃあ部活が終ったら、正門の所で、
俺、待ってるから……」
「あ、うん。わかった」
「約束は終わりましたか?」
葉山が二人に声をかけた。
「あ……はい」
二人が返事をすると、葉山は優しく微笑み、
「じゃあ、この散らばった教本をチャチャっと
片付けて、梶本君も一緒に美術室に運んでください」
と言うと落ちていた教本を手渡した。
「え~、俺もですか~」
「はい、もちろん。昼間、適切なアドバイスを
したでしょ? なんなら、彼女に今ここで
バラしてもいいんですよ。項垂れていたこと等」
「わ~かりました。やります。やります。はい」
「はい! いい子でよろしい。上野さんも
素早く拾いなさい。早く!」
とニヤリと笑う葉山を見た夏も教本を拾いだした。
段ボールを抱え、美術室に向かって渡り廊下を
歩く葉山、恭介、一番後ろには夏。
夕陽が差し込む渡り廊下、遠くから聞こえてくる
運動部のかけ声と吹奏楽部の演奏の音……。
夏は、倉庫の中で至近距離で見た葉山の顔に
ドキドキとしたこと、
慌てて、夏に駆け寄ってきた恭介に
ドキドキしたこと、
この気持ちは、一体……?と少しだけ
考えるのであった。
そして、箱から飛び出した美術教本の数々……。
その光景を見た恭介は、思わず夏と葉山の
もとに駆け寄ってきた。
「先生、どうしたんですか?
何かあったんですか?」
「あ~ん、たった今、上野さんが
脚立から落ちたんですよ……」
「脚立から落ちた? 夏大丈夫なの?」
慌てる恭介に夏が、両方の掌を軽く
前後させながら、
「大丈夫だよ。先生が守ってくれたから」
と言った。
「そう……よかった」
安心した顔をする恭介……。
「ところで、梶本君こそどうしたですか?
こんなところに来るなんて……」
「あ……、イヤ、その、夏……上野さんに
用事があって……」
「ふ~ん、さっそく実行してるんですね。
正直でいい子だ……」
葉山が恭介に言った。
「実行? 正直?」
夏が二人に聞いた。
「あ、いや、なんでもないよ。今日部活済んだら
一緒に帰ろうと思って……。だめかな?」
「べつに……。いいけど」
「そうか、じゃあ部活が終ったら、正門の所で、
俺、待ってるから……」
「あ、うん。わかった」
「約束は終わりましたか?」
葉山が二人に声をかけた。
「あ……はい」
二人が返事をすると、葉山は優しく微笑み、
「じゃあ、この散らばった教本をチャチャっと
片付けて、梶本君も一緒に美術室に運んでください」
と言うと落ちていた教本を手渡した。
「え~、俺もですか~」
「はい、もちろん。昼間、適切なアドバイスを
したでしょ? なんなら、彼女に今ここで
バラしてもいいんですよ。項垂れていたこと等」
「わ~かりました。やります。やります。はい」
「はい! いい子でよろしい。上野さんも
素早く拾いなさい。早く!」
とニヤリと笑う葉山を見た夏も教本を拾いだした。
段ボールを抱え、美術室に向かって渡り廊下を
歩く葉山、恭介、一番後ろには夏。
夕陽が差し込む渡り廊下、遠くから聞こえてくる
運動部のかけ声と吹奏楽部の演奏の音……。
夏は、倉庫の中で至近距離で見た葉山の顔に
ドキドキとしたこと、
慌てて、夏に駆け寄ってきた恭介に
ドキドキしたこと、
この気持ちは、一体……?と少しだけ
考えるのであった。