恋はレモンのように
通学路にて
学校からの帰り道、ひとみが夏に話かけた。
「美術展?」
「そう、今月末までなんだよ。
夏、行こうよ。ほら、招待券あるんだ」
美術展の招待券をチラつかせ、ひとみが
夏を誘った。
「う~ん。でも、私、自分の作品まだ
仕上がってないんだよね。この前も葉山先生に
言われたばっかだし……」
「何言ってるの! 一日くらい大丈夫だよ。
それに、夏の作品制作の参考にも
なるんじゃないの? ね~、行こうよ~」
「わかったよ。 じゃあ、今週の日曜日
ならいいけど……」
「やったぁ~。じゃあ、約束ね!
あっ! そうそう! 恭介君にも声かけてる
から……、三人で行くからね! じゃあ、
私、こっちだから……」
そう言うと、ひとみは夏の前から走り去った。
家までの道のりを一人歩く夏……。
「夏、今帰り?」
後ろから彼女を呼ぶ声が聞こえ、
夏が振り返ると、息を切らした幼馴染の
恭介が立っていた。
「恭介……、どうしたの? 息切らして」
「夏が歩いてるのが見えたから、走って来た」
「大丈夫? ほら、ハンカチ。汗拭きなよ」
「ありがとう」
恭介は夏からハンカチを手渡されると、
額の汗を拭きとった。
通学路を歩く恭介と夏……。
「ひとみちゃんから聞いたよ。美術展のこと。
一緒に行ってくれるんだね。」
「あ~、それね。うん。ひとみちゃんから
連絡があって、一緒に行こうって……」
「美術展なんて、恭介、興味あるの?」
「う~ん、興味ないって言うかわかんないかな」
「でしょ? 私達に無理に付き合うことないのに」
「無理矢理じゃないよ。俺、夏とひとみちゃんと
一緒にいること嫌いじゃないよ。気楽でいいし」
「え~、何それ……。どうでもいい的な発言」
「ハハハ……。それは失礼しました。」
「なぁ~んか、楽しそうだね。そこの高校生、
こんな時間まで。早く帰宅しなさい。
夜になるぞ!」
前方から、歩いて来た葉山が二人に声をかけた。
「あ! 葉山先生。どうしたんですか?」
恭介が葉山に尋ねた。
「俺も今帰りだよ。途中でコンビニ寄って来た」
葉山はコンビニ袋を顔の前に持ち上げ微笑んだ。
「先生、今、一人暮らしなんですよね?」
恭介が葉山に聞くと、
「そうなんだよ。親父の転勤でおふくろも一緒に
ついて行っちゃってさ、で、家を空き家にするわけ
いかないからって、急遽俺が呼び戻され、
あの家に住むことになったんだ」
「そうだったんですね。葉山先生が夏の隣に
住んでるって聞いた時は驚いたから……
夏の部屋の前が先生の部屋なんですよね?」
「そうだけど……。何? もしかして、梶本君
心配してるのかな? 俺が彼女のすべてを知ってるから」
葉山がクスッと笑った。
「ち・ちがいますよ。何言ってるんですか」
顔を赤らめ、動揺する恭介に夏も慌てて、
「葉山先生! もう、からかうのやめて
ください! 恭介が困ってるじゃないですか……」
語気を少し強めた夏の顔を見た葉山は、
優しく微笑むと、
「はい、はい、ごめんね……」
と言うと、コンビニ袋を下げて二人の前を
通り過ぎて行った。
「もう、葉山先生って、学校ではいつも
シュッとしてるのに、学校から一歩外に出ると
意地悪になるんだよね」
「まぁ、仕方ないよ。先生も俺と一緒で
夏の幼馴染みというか、隣の優しいお兄ちゃん
なんだからさ……」
「優しいお兄ちゃんは……言い過ぎだよ。
二面性を持つ、ドSの美術教師!」
ほっぺたをぷくりと膨らます夏……
「夏、そんな顔するなよ……
じゃあ、俺も帰るよ。じゃあ、また明日な」
そう言うと恭介も夏の前から歩き去った。
空に、一番星が光る頃、
家の前に辿り着いた夏は、隣の家の
二階の窓を見上げると、カーテンから薄っすらと
明かりが漏れていた。
夏の周りにいる男性は、
幼馴染のイケメン恭介と、
二面性があるお隣りに住む
ドSの美術教師、葉山……
そして、今週末、夏は、
美術館で最悪の出会いをするのであった。
「美術展?」
「そう、今月末までなんだよ。
夏、行こうよ。ほら、招待券あるんだ」
美術展の招待券をチラつかせ、ひとみが
夏を誘った。
「う~ん。でも、私、自分の作品まだ
仕上がってないんだよね。この前も葉山先生に
言われたばっかだし……」
「何言ってるの! 一日くらい大丈夫だよ。
それに、夏の作品制作の参考にも
なるんじゃないの? ね~、行こうよ~」
「わかったよ。 じゃあ、今週の日曜日
ならいいけど……」
「やったぁ~。じゃあ、約束ね!
あっ! そうそう! 恭介君にも声かけてる
から……、三人で行くからね! じゃあ、
私、こっちだから……」
そう言うと、ひとみは夏の前から走り去った。
家までの道のりを一人歩く夏……。
「夏、今帰り?」
後ろから彼女を呼ぶ声が聞こえ、
夏が振り返ると、息を切らした幼馴染の
恭介が立っていた。
「恭介……、どうしたの? 息切らして」
「夏が歩いてるのが見えたから、走って来た」
「大丈夫? ほら、ハンカチ。汗拭きなよ」
「ありがとう」
恭介は夏からハンカチを手渡されると、
額の汗を拭きとった。
通学路を歩く恭介と夏……。
「ひとみちゃんから聞いたよ。美術展のこと。
一緒に行ってくれるんだね。」
「あ~、それね。うん。ひとみちゃんから
連絡があって、一緒に行こうって……」
「美術展なんて、恭介、興味あるの?」
「う~ん、興味ないって言うかわかんないかな」
「でしょ? 私達に無理に付き合うことないのに」
「無理矢理じゃないよ。俺、夏とひとみちゃんと
一緒にいること嫌いじゃないよ。気楽でいいし」
「え~、何それ……。どうでもいい的な発言」
「ハハハ……。それは失礼しました。」
「なぁ~んか、楽しそうだね。そこの高校生、
こんな時間まで。早く帰宅しなさい。
夜になるぞ!」
前方から、歩いて来た葉山が二人に声をかけた。
「あ! 葉山先生。どうしたんですか?」
恭介が葉山に尋ねた。
「俺も今帰りだよ。途中でコンビニ寄って来た」
葉山はコンビニ袋を顔の前に持ち上げ微笑んだ。
「先生、今、一人暮らしなんですよね?」
恭介が葉山に聞くと、
「そうなんだよ。親父の転勤でおふくろも一緒に
ついて行っちゃってさ、で、家を空き家にするわけ
いかないからって、急遽俺が呼び戻され、
あの家に住むことになったんだ」
「そうだったんですね。葉山先生が夏の隣に
住んでるって聞いた時は驚いたから……
夏の部屋の前が先生の部屋なんですよね?」
「そうだけど……。何? もしかして、梶本君
心配してるのかな? 俺が彼女のすべてを知ってるから」
葉山がクスッと笑った。
「ち・ちがいますよ。何言ってるんですか」
顔を赤らめ、動揺する恭介に夏も慌てて、
「葉山先生! もう、からかうのやめて
ください! 恭介が困ってるじゃないですか……」
語気を少し強めた夏の顔を見た葉山は、
優しく微笑むと、
「はい、はい、ごめんね……」
と言うと、コンビニ袋を下げて二人の前を
通り過ぎて行った。
「もう、葉山先生って、学校ではいつも
シュッとしてるのに、学校から一歩外に出ると
意地悪になるんだよね」
「まぁ、仕方ないよ。先生も俺と一緒で
夏の幼馴染みというか、隣の優しいお兄ちゃん
なんだからさ……」
「優しいお兄ちゃんは……言い過ぎだよ。
二面性を持つ、ドSの美術教師!」
ほっぺたをぷくりと膨らます夏……
「夏、そんな顔するなよ……
じゃあ、俺も帰るよ。じゃあ、また明日な」
そう言うと恭介も夏の前から歩き去った。
空に、一番星が光る頃、
家の前に辿り着いた夏は、隣の家の
二階の窓を見上げると、カーテンから薄っすらと
明かりが漏れていた。
夏の周りにいる男性は、
幼馴染のイケメン恭介と、
二面性があるお隣りに住む
ドSの美術教師、葉山……
そして、今週末、夏は、
美術館で最悪の出会いをするのであった。