恋はレモンのように
第六章

九州旅行とお泊り会

 そんなこんなで、時間は過ぎて行く。 

 「矢上先生~、もうすぐ教育実習
終っちゃいますね。寂しいな~」
 女子生徒が言った。
 「そう? そう言ってもらって嬉しいな」
 微笑む矢上……。

 「どうだかね~。あの変わり様……
 まぁ、私には関係ないけどね……」
 夏が呟いた。

 「先生、先生、じゃ、じゃあ、教育実習が
終れば、ただの大学生になるんだよね?」
  矢上を取り囲んでいる女子生徒が言った。
 「そうだね~。ただの大学生になるな」
 「それなら、先生とデート出来るの?
 矢上先生、今、付き合ってる人いないんでしょ?
 じゃあ、私とか……どうですか?」
 「えっ? それは~」
 「あ~ずるい。私も……」
 詰め寄られる矢上は……
 「ははは、いや~悪いけどごめんね」
 と両手を合わせて謝った。

 「え~、矢上先生~。お願い」
 両腕を掴まれる矢上……

 「あっと、俺次の授業のアシスタントの
準備があるんだった。じゃあね」
  と言うと矢上は、女子生徒を振り切り
夏とひとみがいる方向に歩いて来た。
  
 夏とひとみに気づいた矢上……
 「なんだよ……」
 と口を尖らせた。
 「別に~。オモテになりますね~
矢上先生~」
 と茶化すように夏が言った。
 「茶化すなよ……」
 「え? なんですかぁ~?」
 「ああ、もういい!」
 矢上が二人の前から立ち去った。


 「あ~行っちゃった。まぁ、これで
少しは気が晴れた。ね! ひとみちゃん」
 夏が笑いながら話かけた。

 「あ~、夏、ここにいた」
 恭介が夏とひとみのもとに歩いて来た。
 「恭介どうしたの?」
 「おまえ知ってる?」
 「何が?」
 「夏の両親と、俺の両親……
四人で旅行だと……」
 「え? 旅行? 何で? 聞いてない」
 「だろ? 俺も驚いてさ……なんか
応募してた懸賞が当たったらしくて……
 九州きき酒めぐりの旅……」
 「何で親だけなの?」
 「それがさ、お酒飲むツアーらしくて年齢制限
あるんだってさ……」
 「年齢制限?」
 「うん……」
 「お酒飲むツアーだから?」
 「……だそうだ」

 「ふ~ん。そうか……で、いつから行くの? 
その旅行……」
 「ああ、来週の金曜日から日曜日までの
二泊三日……」
 恭介が夏に伝えた。
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