恋はレモンのように
 温かいシャワーを浴びた夏が浴室から出て来た。
 「う~、寒いな~。こりゃぁ、
風邪引いたかな?」
 と呟く夏……。

 リビングの窓越しに隣の家を見つめる。
 カーテンのように降り続ける雨の向こうに
うっすらと灯る光にホッとする夏。

 マグカップに牛乳を注ぎ、小さじ3杯の
ココアパウダーを入れスプーンでかき混ぜ
電子レンジに入れた。

 チン……。
 ホカホカの湯気が立ちのぼるココアを
一口飲むと笑顔になった。

 「へっくしゅん、へっくしゅん……
う~、寒いな……」
 パジャマの上に厚手の上着を羽織った夏は
ソファーに座ると、TVをつけ人気番組を
見始めた。

 午後8時……。
 「う~、やばい……風邪だ……」
 ソファーの前に置かれたローテーブルの
上には『37.8』と示した体温計……。
 「暑いな……。そうだ。
おでこを冷やすやつ……があった……」

 ガタン……。
 部屋の中が真っ暗闇になった……。
 「え……なに? 停電? うわぁ~最悪……」
 夏はその場にペタンと座り込んだ。
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