恋はレモンのように
第九章

二人だけの秘密

 カーテンから差し込んでくるほのかな光で
目を覚ました夏……。
 ベッド横に目をやると、夏の手に重ねられた矢上の手……。
その視線の先には、ベッドの上に頭を伏せた矢上の寝顔。
 「こんな……顔するんだ……」
 夏は矢上の寝顔をしばらく見つめていた。
 「ん……ん、ん?」
 矢上が目覚め、今自分がいる場所を確認
するかのように態勢を整えた。
 ベッドの上に寝ている夏に気づくと、
 「あ~、ごめんな……夏が寝たら帰るつもり
だったんだけど……俺も、寝ちゃった」
 矢上が無邪気な子どものように
言葉を発した。
 
 「こちらこそ……わがまま言ってすみません」
 
 夏の表情を見た矢上は立ち上がると、
 窓際に行き、カーテンを開けた。

 「うわっ……眩しい」
 矢上と夏が思わず目元に手を翳した。

 カーテンを開け、窓を開けると……
昨夜の光景とはまるで別世界のように、
空には雲一つない青空が広がり、
柔らかい風と共に優しい朝陽が差し込んできた。

 「夏、熱は……」
 矢上が夏に近づくと彼女の頬を
両手で包み込んだ。
 「えっと……」
 頬を赤らめる夏に矢上が……
「うん……下がってる。ん? 夏、顔赤いぞ」

 彼の言葉を聞いた夏は、
「そんなことないよ……」
 と慌てた口調で言った。


 ピピピピ……。
 体温計の音がした。
 「うん……。36.8度、大丈夫」
 「そうか?」
 「37.0度以下なら問題ないよ」
 「なら、いいけど……」
 「ねぇ、矢上っち……」
 「なんだよ」
 「お腹すいた……」
 「はぁ~、わかりました。作ります朝食」
 「やったぁ~」

 「夏……」
 「ん? どうしたの?」
 
 ベリッ……
 「痛っ……」
 矢上が夏のおでこに貼ってあった
カピカピの冷却シートを思いっきり剥がした。

 矢上はニカッと笑い、
 「朝食作るから、着替えて降りて来なよ」
 と言うと階段を下りて行った。
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