恋はレモンのように
 「はい、こんなもんでいいのかな?」
翌朝、教室で色紙をクラスメイトに手渡す夏。
 「わぁ~、流石、夏。物凄くいいじゃん。
ありがとう……みんな~、見て見て……」
 と色紙を握りしめたクラスメイトが
皆を呼んだ。

 夏の周りに、女子生徒が集まって来た。
 「夏、上手だね~。流石! 美術部」
 「いやぁ~、それほどでも……」
 「矢上先生の特徴をよく捉えてて似てる~」
 「ははは……そう?」
 「さては、日頃から物凄く観察してたりして」
 「え? それは、ない、ない、絶対ない」
 首を横にブンブンとふる夏。

 「じゃあ、これ、夏からね……」
 クラスメイトが夏に色紙を渡した。
 「え? なんで私から?」
 「だって、こんなに素敵なイラストを
描いてくれたから……」
 クラスメイトが微笑んだ。

 「ありがとう……でも私は、一番最後がいいな」
 夏が呟いた。

 「一番最後でいいの?」
 不思議そうな顔をするクラスメイト。
 「うん。私は、最後の締めってことで……」
 「そっか~。わかった。じゃあ、私達から
メッセージ書き込んでいくね……」
 と言うと色紙を持ったクラスメイトが、
他の女子に声をかけ始めた。

 その様子を見ていた夏は、
 「そっか~、もうすぐお別れなんだ」
 と呟いた。
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