恋はレモンのように
第十章

聞いてないよ

 水曜日……
 矢上の教育実習もいよいよあとわずか
となった。
 
 朝のホームルーム、教卓の前に立つ葉山に
生徒が尋ねた。
 「え~、矢上先生、今日いないんですか?」
 「はい……今日は、教育実習後に提出する
書類や、航空チケットの申請等で忙しいそうです」

 「航空……チケット?」
 夏が不思議そうな顔をした。

 「矢上先生との思い出作りたかったのに~」
 「私も~」
 「私も~」
 「俺も~」
 教室内に響く笑い声を聞きながら、
夏は頬杖をつくと、窓から見える青空を見つめた。
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