ワンコ系ビジュ強め騎士はスパダリ魔法士の先輩に夢中
この学園には美しい王子と美しい騎士がいる。

「立て、セドリック。」

耳横までの短さで切られた明るい飴色の髪は、その小さな顔と頭を際立たせる。
額から伸びる鼻梁は高く真っすぐで、誰よりも高いプライドを表しているかのようだった。
長めの前髪から覗くプラチナ色の瞳は、(うずくま)る男を冷たく見下ろし、彫刻のように整った口元に表情は無い。

―――白薔薇王子と呼ばれる彼女の手は、つい先ほど魔法の発動をしたため白銀の光を帯びていた。


「い、ってて…先輩、今手加減なしで打ちました?あっ、それだけ俺が力を付けたってこと?」


対面に蹲る長身の男は、白薔薇王子と対のように、”黒騎士”と呼ばれている。
漆黒の黒い髪、月のように明るい金の眼、生まれながらに剣の才に恵まれた彼のことを、彼女だけは心の内で”腹黒”と呼んでいる。

周囲に見せるような人懐こい表情や気さくな笑顔は見せかけであることを彼女は知っている。
彼はよくその黒い頭を屈め、女子生徒に撫でられながら「黒い大型犬みた~い」と可愛がられているが、彼女たちは知らない。
そのニコニコした金の眼が標的を射止める時の鋭さを。

誰よりも野心家で、力を求め、刃を研ぐその姿は騎士という上品なものではなく、戦士のようだ。
黒い番犬など可愛いものではない。
漆黒の猛獣だ。


が、しかし。

負けるわけにはいかないのだ。

この男に負ければ、アイリスの今までの努力の意味が消えうせる。
白薔薇王子は無表情のまま、立ち上がる黒い影に向けて白銀の魔力を備えた。

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