ワンコ系ビジュ強め騎士はスパダリ魔法士の先輩に夢中
セドリックに足止めをされたおかげで、アイリスの昼食は若干遅くなった。
貴重な時間を無駄にしないため、手早く昼食を終わらせ、席を立つ。

そんな何気ない仕草でも、アイリスは女子生徒から熱い視線を向けられる。

ここまで女子生徒に人気なのはアイリス側にも原因がある。

例えば今も。
アイリスに見惚れるあまり、一人の女子生徒がカトラリーを落としてしまった。
カシャン!という音に気が付いたアイリスは、落ちたそれを拾い上げ、慌てて立ち上がろうとする女子生徒の肩をそっと優しく押して再び座らせた。

「座って待っていて。」

そして新しいカトラリーを持ってきてくれるのだ。
「あ、ああああありがとうございます…。」
これにはそのテーブルについていた女子生徒全員が満場一致で眉を下げ、うっとりした。

外に出ても無意識の王子ムーブは止まらない。

アイリスは幼いときからトレーニングを続けているため、かなり体幹が鍛えられている。
ぶれのない真っすぐな体から伸びる手足は170センチの高身長ゆえスラリと長く、ただ歩くだけで優雅に映る。
その美しさに目を奪われた女子生徒の手から、ハンカチが風で飛ばされた。

「あっ!」と鈴のような可愛らしい声がこぼれたのも束の間、飛ばされたものは白い手袋をはめたアイリスの手によって掴まれる。

ハンカチを持って女子生徒の方へ伏し目がちに闊歩してくるアイリスの背後には白い薔薇がエフェクトされて(いるように女子生徒の眼には映って)いる。

「どうぞ。」
「あっ…ありがとうございます…!!」

3年の女学生は顔を真っ赤に染め感謝を伝えた。
アイリスの女性にしては少し低めのアルトの声も、また魅力に拍車をかけるのだろう。
さらに親切にはしてくれても、微笑み一つ見せてはくれない。
この硬派さに令嬢たちは魅了された。

「ああ、今日も麗しい…!」
「この美貌を持ってして、魔法科の首席!学生ながら既に騎士団の遠征にも参加してらっしゃるそうよ…」

ああ、完璧―――!令嬢たちは小さな傷一つない手で自身の両頬を包んでうっとり身もだえた。

色素の薄い整いすぎた容姿と、騎士の父に鍛え上げられた無駄一つない優美な動きをもってして、誰が考えたか「立てば白薔薇、()しても白薔薇、歩く姿も白い薔薇…。」と言われるようになったのだった。

そんなギャラリーを気にも留めないアイリスは、残りの昼休みを有効活用しようと大股でずんずん歩いていく。

と、そこへアイリスよりも二回りほど小さい影が近づき、アイリスの左腕に飛びついた。
先んじて気配に気が付いたアイリスだったが、彼女だと分かり、大人しく左腕を任せた。


「アーイッリスっ!会えた♡」
「クレア、久しぶり。」


クレア、と呼ばれた少女は嬉しそうにその白い騎士服に頬を寄せる。
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