さようなら
中に入ってから、二時間が経った。


僕はクリスマスの

夜空を眺めながら、

紗江を待った。


暫くして、パレードが始まったのか

音楽が流れ始めた。


僕はパレードを遠くから

眺めた。


キラキラと輝く光の中、

紗江と初めてディズニーに来た

時の事を思い出した。


紗江と付き合って、

初めてのクリスマス。


僕らはディズニーに遊びに来た。


僕は生まれて初めての

ディズニーランドだった。


紗江に手を引っ張られ、

たくさん歩いた記憶がある。


そして二人でこのパレードを見た。


楽しかったなぁ…


光輝くパレードが、

少し霞んで見えた。



パレードが終わった。


紗江からの連絡はない。

少しずつ人が少なくなってきた。


僕はシンデレラ城の前で

連絡を待った。


もう、この先のことは

分かっているのに…



花火が冬の夜空を明るく照らす。


僕は歩き始めた。


花火の光で僕の影が

地面に写し出される。


自分の心が見えた気がした。


僕は大きなクリスマスツリーの

前に来た。


初めて紗江とディズニーに来た

あの日も、最後にこの

クリスマスツリーを見た。



「夜になると一段とこの

綺麗さが分かるね。

こんな綺麗なクリスマスツリー、

生まれて初めて見るよ」


「もう、敬太ってば大袈裟だね」


「大袈裟じゃないよ。

本当にこのクリスマスツリーは

綺麗だよ。


これを見た全ての人の心を

美しくしてくれる。

このクリスマスツリーには

そんな力があるんじゃないかな」



紗江は僕の手を強く握った。


僕は心に決めた。


この美しいクリスマスツリーに

誓って…


紗江といつか結婚し、

紗江を幸せにする事を…

そして僕は紗江に言った。


「今は学生だから、

すぐには無理だけど、

いつか必ず結婚しよう」

紗江は笑顔で頷いた。


< 19 / 66 >

この作品をシェア

pagetop