さようなら
僕と紗江の物語は

ここから始まった。


そして今日、この場所で終わる。



僕は携帯を取り出した。

そしてクリスマスツリーの

写真を撮った。


僕はそのクリスマスツリーの

写真をメールで送った。




紗江へ


紗江、今年のクリスマスツリーも

すごく綺麗だよ。


色とりどりの光が

幻想的な雰囲気を作っているよ。


紗江、僕らは6年前、

このクリスマスツリーの前で

愛を誓った。


そこから二人の物語が

始まったんだ…


あれから6年…

毎日毎日、楽しかった。

紗江も同じ気持ちでいてくれたら

すごく嬉しいよ。


6年前に始まった物語は、

今日、ここで終わる。


でも、ただ終わるだけじゃない。


今日、このクリスマスツリーの

前で、また新しい物語が

始まるんだ。


今度の物語は、お互い違う物語…


それぞれの道を歩んで行くんだ。


紗江にはきっと、

素晴らしい物語が待っている。


これから今まで以上に

たくさん笑える日が来るよ。


オレも、ここから

新しい物語を歩んでいく。


必ず、素晴らしい物語に

してみせる。



オレは頼りがいのある、

格好いい男だったかなぁ…


情けない男だったかなぁ…


紗江、ずっとありがとう。


さようなら…





クリスマスツリーに飾られた

綺麗な光が、とても眩しかった。


たくさんの人が

このクリスマスツリーの前で

愛を誓い、帰っていく。




冷たいものが頬に当たった。


僕は空を見上げた。


雪が降り始めていた。


キラキラと雪が輝いている。


その雪の光が僕の目には

少し霞んで見えた。


〔完〕
< 20 / 66 >

この作品をシェア

pagetop