さようなら
父と母が駅まで送ってくれた。


わざわざ改札の中に入り、

ホームまでお見送りに来てくれた。


出発の時間が近付くにつれ、

寂しさが込み上げてきた。


そんな私に気付いたのか、

母は私の手を握ってくれた。


父親は心配そうに私を見て言った。


「紗英、何かあったらすぐに

お姉ちゃんに電話するんだぞ」


私は頷いた。


寂しさのあまり、声が出なかった。



新幹線が来た。


私は新幹線に乗り込んだ。


父と母は大きく手を振っていた。


母の目には涙が浮かんでいるのが

見えた。


私の目にも涙が溢れていた。


私は席に座り、ずっと目を

押さえていた…





母が目を覚ました。


「紗英、お菓子持ってきたから

食べていいよ」


「うん。お腹空いたら食べるね」


「新幹線は早いわね…


東京まであと少しね」


「こんなに早いのにね…

もっとたくさん帰ってくれば

よかったな…」


「いいじゃない別に」



母は優しく言った。



暫くして東京に到着した。


東京駅には母のお姉さんが

車で迎えに来てくれていた。


おばさんは改札で私たちに

手を振っていた。




「ここよ~!」


おばさんは大きな声で

私たちを呼んだ。


おばさんはとても元気のいい人だ。


ある意味、さっきのタクシーの

おじさんに似ているかも…




「お姉ちゃん、わざわざごめんね」


「いいのよ~。ドライブがてら

来ただけだから。なんてね」


母と私は笑った。


「お姉ちゃんてば」


「さあさあ、ここは人が多くて

疲れちゃうから、

早く車に乗りましょう」



おばさんはついこないだまで

うちに数日間来ていた。

その時に数年振りに会った。


おばさんは私の変わりように、

最初は私が誰だか分からなかった

みたいだ。



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