さようなら
私たちはおばさんの車に乗った。



「百合子、疲れてない?

大丈夫?」


「平気よ、お姉ちゃん」


「寒かったら暖房上げるから

言ってね」




母は疲れてないと言っていたが、

少し疲れているようだった。



「お母さん、また寝てていいよ」


「うん、ありがとね」



母はまた目を閉じた…




おばさんはラジオを付けた。


ボリュームを下げ、音楽の

チャンネルに変えた。




ビルがたくさん建ち並ぶ街を

過ぎて行く。


少しずつ木々が増えてきた。


母の実家に近付いてきた。


母の実家に行くのは、

7、8年振りくらいだ。


母の実家が近付いてくるに連れ、

見た事のある風景が現れてきた。




「紗英ちゃんたちが来てた頃とは

街も少し変わってるかな」


「はい…」


「紗英ちゃんが住んでるのは

町田の方だっけ?」


「はい… 近いのに、何年も

全く来なかった…」


「仕方ないわよ。


社会人になれば、

みんな色々あるわよ」





母の実家に到着した。


車を降りると、少し懐かしい

香りがした。



「お母さん、大丈夫?


家に入ったら少し横になろうね」


「うん。大丈夫だからね」



私は母の腕を握り、

玄関に向かった。



母の実家は少しリフォームして

綺麗になっていた。


おばさんが玄関を開けて

先に入っていった。




「お父さん!お母さん!

百合子と紗英ちゃんが来たわよ!」


おばさんは大きな声で言った。


母と私も玄関に入った。


奥から祖父と祖母が出てきた。


二人とも、心配そうな顔をして

出てきた。



二人は少し黙ったまま、

母を見ていた。


母は祖父と祖母に優しく

微笑んだ。


祖父と祖母は静かに頷いた。


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