さようなら
みんな黙ってしまった。


少し慌てた様子で、おばさんが

話し出した。


「百合子、少し横になった方が

いいわ。


お母さん、布団敷いてあるよね?」


「う、うん… 敷いてあるから…


少し横になるといいよ…」


祖母も少し慌てて返事をした。




家の中に上がり、母は着替えをし、

布団に入った。



「百合子ちゃん、お茶入れたから

居間においで」


「あ、はい。すぐ行きます」



お姉さんが呼びに来てくれた。


やはり母は疲れていたようで、

すぐに眠りに就いた。


私は布団から出ていた

母の手を握り、自分の頬へ当てた。


温かい手…



私は母の手を布団の中に
そっと入れた。






「すみません、少し荷物の整理を

してました」


「いいのよ。百合子は?」


「眠りました。久し振りに

遠出したから、少し疲れたんだと

思います」


「そうね。少し眠った方が

いいわね」



祖父と祖母は心配そうに

私とお姉さんの話しを聞いていた。




「はい、紗英ちゃんお茶ね。


紗英ちゃんも疲れたでしょ」


「いいえ、私は平気です…


あ、おじいちゃんとおばあちゃんに

挨拶してませんでしたよね。


すみません…」


「いいんだよ。

私たちより百合子の世話を

してあげて」


祖母が笑顔で言ってくれた。


祖母の言葉に続き、祖父も

話し始めた。


「そうだよ。わしらの事は

いいから」


「それにしても紗英ちゃんは

こんなに綺麗になって…

百合子に似てきたわ…」


「本当に綺麗になった。


百合子とそっくりだよ」


「確かにそうね。


百合子に似てきたわね」


祖父、祖父、お姉さんが

私の顔を見つめた。



私は少し恥ずかしくなった。


でも、嬉しかった…


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