さようなら
少しの間、沈黙が流れた。


私たちのお茶を啜る音が

寂しく聞こえた。



暫くして祖母が話し出した。


「百合子と紗英ちゃんは

どれくらいここに

いられるんだい?」


「長くて一週間くらいかな。

ね、紗英ちゃん」


私が答えようとしたら、

お姉さんが先に答えてくれた。


「はい…」


「そうかい…」


祖母はもっと長くいられると

思っていたらしく、

少し寂しそうな顔をした。



「さて、私は夕飯の買い物を

してくるわ」


お姉さんが立ち上がった。


「紗英ちゃんは家にいる?」


「はい…」


「そうね。百合子が起きた時に

いた方がいいわね。


何か欲しいものは?」


「いえ、今は大丈夫です」


「分かったわ。

じゃあ、行ってくるわね」



お姉さんは買い物に出掛けた。


私はお茶碗を片付けた。


母の実家のキッチン…


母の実家に来た時は毎回

祖母が母の好きなおはぎを

作ってくれた。


それを母と私はいつも手伝っいた。


母も時々家で作ってくれるけど、

母はいつも、「おばあちゃんの味に

ならないのよね…」と言っていた。


母は自分が作るおはぎに、

いつ納得していなかった

みたいだけど、私は母のおはぎも

とても好きだった。



私は茶碗を洗いながら、おはぎを

作る母の姿を思い出していた…



「紗英ちゃん、もういいから

座ってていいよ」


祖母がキッチンにやってきた。


私はその時思った…


私が母におはぎを作ってあげようと

考えた。



「ねえ!おばあちゃん!

お母さんにおはぎを

作ってあげたいの。


だからおばあちゃんに作り方を

教えてもらいたいの」


私が大きな声を出したので、

祖母は少し驚いた表情をしていた。


「おはぎ…

そういえばいつも作っていたわね。


分かったわ、一緒に作りましょう」


祖母は嬉しそうな表情をした。


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