さようなら
私と達也さんは病室を出た。


「お母さんに会えて良かった。


ありがとう」


「ううん。私の方こそありがとう。


母もすごく喜んでたわ」


「うん…」



私は病院の外まで

達也さんを送った。



「ここでいいよ。ありがとう」


「達也さんは… これからは…」


「ずっとこっちにいるよ。


店を出すにも、もう少しお金が

必要だから、とりあえず

働く場所を探すよ」


「そう…」


「紗英さん、いつでも連絡

していいからね。


何かあればすぐに飛んで来るから」


「うん…


「紗英さん…

またお母さんに会いに来て

いいかな?」


「うん…」








それから達也さんは毎日

母に会いに来てくれた。


母も嬉しそうだった。



そして一週間後、母の容態が

急変した。


先生が親戚たちも

呼んだ方がいいと言った。


私はすぐに鎌倉のおばさんに

連絡をした。


そして達也さんにも。





「紗英さん…」


達也さんがすぐに

駆け付けてくれた。


達也さんは何も言わずに

私を抱きしめた。


私は涙が止まらない…


ちゃんとしなきゃいけないのに…




数時間後、鎌倉のおばさんたちが

到着した。


おばさんたちは達也さんを見て、

少し驚いた表情をした。


私は今までの事をみんなに

話した。




みんな何も言わずに母を

見ていた。


その時、母が目を開けた。



「お母さん!」


「百合子!」


みんながベッドを囲んだ。



「達也さんは…」


「いるわよ!」


達也さんが母の目の前に来た。


母は私の手を取って、

達也さんの前に出した。



「紗英を… 頼みます…」

達也さんは私の手を取った。


そして達也さんはもう片方の手で、

母の手を握った。


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