さようなら
私の父と母が別れたのは

私が一歳の時だった。


私は母に引き取られ、

母の実家で祖父母と

一瞬に暮らした。



父と母が別れた後も

私が四歳の時までは

週に一度は父と会っていた。


しかし、私が四歳の時に

母が再婚し、それ以来

父とは会わなくなってしまった。



私が二歳半くらいになると、

私と父の二人だけで遊ぶ事が

多くなった。


遊ぶ場所といえば、近くの公園か

市が経営していた動物園だった。


私が今でも良く覚えているのは

公園のブランコに乗って

遊んだ事だった。


私は父の膝の上に乗り、

父と二人でブランコに乗った。


そしてブランコに乗りながら、

父といろんなお話しをしていた。


私はブランコに乗りながら、

父と話しをするのが好きだった。


だから今でもはっきりと

覚えているのだと思う。



ただ、父の顔は覚えていなかった。


家には写真もないので、

どんな人なのか、

全く分からなかった。







「葵、次何して遊ぶ?」


「ブランコー!」


「よーし!パパと一緒に乗って、

お話ししようか!」


「うん!」




父がブランコに腰掛ける。


父が私の体を持ち、膝の上に

乗せてくれる。


私はその瞬間がすごく嬉しい。




「ねぇ、葵」


「なにー?」


「おうちで何して遊んでた?」


「んーとね、ママとパン作ったよ」


「へ〜、パン作ったんだ!

すごいね〜。


どんなパン作ったの?」


「ぞうさんと、ブタさんと、

あとネコちゃん作ったよ!」


「そりゃすごいね!


美味しかった?」


「うん!」



「他は何かした?」


「おばあちゃんとおじいちゃんと

ママと、遊園地行ったよ」


「へ〜、何乗ったの?」


「ウマに乗って、グルグル

回るやつ乗ったよ!」


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