「お前さえいなければ」と言われたので死んだことにしてみたら、なぜか必死で捜索されています
「ねぇ、シリウス。王子とか王家とか、一体何を言ってるのかしら……」

『ちょっと大変なことになったかもしれないね』

 シリウスは私の肩で体を揺らしながら、警戒したようにエリオット様とそれを囲む大人たちを見ている。


 すると、突然エリオット様が振り返って私の手を引いた。

「セラフィーナ」

「なんでしょう……?」

「お前は俺の妃になれ。いいな」

「えっ。は、はい……」

 あまりに堂々と言われて、私は思わず了承してしまった。シリウスが「え」と驚いた顔で私を見上げている。

 エリオット様は私の答えをきくと得意げに笑った。


「シャノン公爵。本人の了解も取れたことだし、セラフィーナは王宮に連れていっていいよな」

「お、お待ちください、殿下……!」

 エリオット様の言葉に、お父様の顔がいっそう慌てた顔になる。

 レオンさんは青ざめた顔でエリオット様を止めた。

「殿下、そんなわがままを言ってはなりません!」

「しかしセラフィーナは公爵家の娘のくせに随分痩せて不健康そうだぞ。王宮で面倒を見てやった方がいいのではないか」

「それはお体が弱いからでしょう。というかご令嬢に向かってそんなことを言ってはいけませんよ」

「それなら服はどうなのだ。公爵家の令嬢とはこんなみすぼらしい服を着せられて、庭の掃除をさせられるものなのか?」

 レオンさんは言葉に詰まってしまった。

 お父様とお母様の顔からどんどん血の気が引いていく。エリオット様はそんな二人の顔をおかしそうに見た。


「いや、別に構わないのだ。シャノン家にも事情があるだろうしな。セラフィーナを王宮に連れて行くことを許可してくれれば、このことを公にするつもりはない」

 それはつまり、許可を出さなければシャノン家が娘の私に対し使用人以下の扱いをしていることをバラすという脅しだった。

 お父様もお母様も、すっかり色を失ってエリオット様を見ている。二人のお姉様は、私を憎々しげに睨んでいた。
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