「お前さえいなければ」と言われたので死んだことにしてみたら、なぜか必死で捜索されています
1.殿下のために死んだことにします
「お前さえいなければ、アメリアを正式な婚約者に出来るのに」
この国の第一王子であり、私の婚約者であるエリオット様は、ため息交じりにそう言った。
彼の隣では、聖女のアメリア様が悲しそうな顔で寄り添っている。
金色の髪に水色の目の儚げな美しさのエリオット様と、赤茶色の髪に鮮やかなアザレア色の目をした華やかなアメリア様。
とてもお似合いな二人なのに、私がいるせいで婚約することはできない。
私はあまりの申し訳なさに、ただ俯いて唇を噛むことしかできなかった。
ここは王宮の一室。
久しぶりに本宮殿に呼び出されて、ソファとテーブルのある小さな部屋に通された私は、エリオット様と、エリオット様の隣に座るアメリア様から、現在の王宮の事情を聞かされることになった。
彼ら曰く、幼い頃にエリオット様と婚約した私がいるせいで、私よりもずっと精霊を操る能力の高いアメリア様のほうが次期王妃にふさわしいにも関わらず、婚約を結ぶことができないのだそうだ。
臣下も国民も本音ではアメリア様を王妃にと望んでいるのに、一度取り決めた婚約を覆すことを神殿がよしとせず、どうにもならないらしい。
その話を聞いたとき、私は久しぶりにエリオット様に呼び出されたと浮かれて、数少ないドレスの中からどうにかいいものを選び、古びた道具でお化粧までした自分が恥ずかしくなってしまった。
現実はそんなに浮かれていられるような状況ではなかったのに。
「申し訳ありません、エリオット様、アメリア様……」
「全くだ。精霊師の名門出身のくせに精霊を操るともできない人間など、本来なら王宮に足を踏み入れることすら許されないのだぞ。お前を軽率に婚約者に選んでしまったばかりに、こんなに面倒なことになるなんて……」
私が謝ると、エリオット様は眉間に皺を寄せて言った。
確かに、私は名門家生まれのくせに精霊を操ることも、強い結界を張ることも出来ない。出来損ないの精霊師だった。
エリオット様を呆れさせてしまうのも無理はない。
「エリオット様! そんな言い方をしたらセラフィーナ様がお気の毒ですわ。確かに、セラフィーナ様の存在が枷になっているのは否めませんけれど……」
お優しいアメリア様がそう言ってくれるけれど、彼女も私の不出来さは庇いきれないようで、言いづらそうに口にした。
私はいたたまれなくなり、もう一度謝罪の言葉を口にする。
「本当に申し訳ありません……。婚約解消する手段があればいいのですが……」
王族との婚約を覆すのは難しい。私は精霊師の名門であるシャノン公爵家出身だから、なおさらだ。
大きな理由もなく婚約を解消すれば、王家はシャノン公爵家の派閥の貴族や、精霊を崇拝する国民たちから批判を受けることになる。
当然、娘が王子の婚約者として不適格とされれば、シャノン公爵家の威信にも関わるだろう。
自分の存在自体が多くの人をがんじがらめにしている現状に気づいて、私は項垂れた。
この国の第一王子であり、私の婚約者であるエリオット様は、ため息交じりにそう言った。
彼の隣では、聖女のアメリア様が悲しそうな顔で寄り添っている。
金色の髪に水色の目の儚げな美しさのエリオット様と、赤茶色の髪に鮮やかなアザレア色の目をした華やかなアメリア様。
とてもお似合いな二人なのに、私がいるせいで婚約することはできない。
私はあまりの申し訳なさに、ただ俯いて唇を噛むことしかできなかった。
ここは王宮の一室。
久しぶりに本宮殿に呼び出されて、ソファとテーブルのある小さな部屋に通された私は、エリオット様と、エリオット様の隣に座るアメリア様から、現在の王宮の事情を聞かされることになった。
彼ら曰く、幼い頃にエリオット様と婚約した私がいるせいで、私よりもずっと精霊を操る能力の高いアメリア様のほうが次期王妃にふさわしいにも関わらず、婚約を結ぶことができないのだそうだ。
臣下も国民も本音ではアメリア様を王妃にと望んでいるのに、一度取り決めた婚約を覆すことを神殿がよしとせず、どうにもならないらしい。
その話を聞いたとき、私は久しぶりにエリオット様に呼び出されたと浮かれて、数少ないドレスの中からどうにかいいものを選び、古びた道具でお化粧までした自分が恥ずかしくなってしまった。
現実はそんなに浮かれていられるような状況ではなかったのに。
「申し訳ありません、エリオット様、アメリア様……」
「全くだ。精霊師の名門出身のくせに精霊を操るともできない人間など、本来なら王宮に足を踏み入れることすら許されないのだぞ。お前を軽率に婚約者に選んでしまったばかりに、こんなに面倒なことになるなんて……」
私が謝ると、エリオット様は眉間に皺を寄せて言った。
確かに、私は名門家生まれのくせに精霊を操ることも、強い結界を張ることも出来ない。出来損ないの精霊師だった。
エリオット様を呆れさせてしまうのも無理はない。
「エリオット様! そんな言い方をしたらセラフィーナ様がお気の毒ですわ。確かに、セラフィーナ様の存在が枷になっているのは否めませんけれど……」
お優しいアメリア様がそう言ってくれるけれど、彼女も私の不出来さは庇いきれないようで、言いづらそうに口にした。
私はいたたまれなくなり、もう一度謝罪の言葉を口にする。
「本当に申し訳ありません……。婚約解消する手段があればいいのですが……」
王族との婚約を覆すのは難しい。私は精霊師の名門であるシャノン公爵家出身だから、なおさらだ。
大きな理由もなく婚約を解消すれば、王家はシャノン公爵家の派閥の貴族や、精霊を崇拝する国民たちから批判を受けることになる。
当然、娘が王子の婚約者として不適格とされれば、シャノン公爵家の威信にも関わるだろう。
自分の存在自体が多くの人をがんじがらめにしている現状に気づいて、私は項垂れた。