「お前さえいなければ」と言われたので死んだことにしてみたら、なぜか必死で捜索されています
3.新天地
「わぁ、すっごく素敵なところね!」
『何にもないとこだね……』
目の前に広がる光景に、思わず感嘆の声が漏れた。
少し寂れた建物のぽつぽつと立ち並ぶ、異国情緒あふれる町。
サフェリア王国と違い、装飾のないやけにシンプルな建物が多い。
小さな田舎町という感じの場所だ。
新鮮な光景に見惚れてしまう。
サフェリアの王宮を出た後、私は崖の真ん中に生える木にエリオット様からもらったショールを落とし、転落したように見せかけた。
ショールに血をつけるためにナイフで腕に傷をつけたので、傷口が今もちょっと痛い。
それにエリオット様からもらった大切なショールを手放してしまったことで心も痛んでいたけれど、この痛みは新しい未来へ進むために必要なものだと考えることにした。
それから私は、マントを着て、目立つ銀色の髪をフードの中に隠し、持っていたわずかなお金で安宿に泊まりながら国境まで旅をした。
幸い、私の持っている服は貴族だとは到底思われないような質素な服がほとんどだったので、服に関しては市井で目立つ心配はなかった。
そして今日の朝、街を出た先にある森を潜り抜け、ようやく国境に出た。
そこでシリウスに頼んで国境を守る兵士たちを眠らせてもらい、隣国に不法入国してきたというわけなのだ。
「ここがラピシェル帝国なのね……。想像とは少し違ったけれど、素敵なところだわ」
『どこが? すごい寂れた町じゃん。店もないし、人影も見えないし』
シリウスの言う通り、目の前の町らしき場所は、簡素な建物が立ち並ぶ、人の姿が見えない寂しい場所だった。
こじんまりした町と言うよりは、町全体が廃墟と化していると言ったほうが近いのかもしれない。
ラピシェル帝国はサフェリア王国よりも発展した国と聞いていたので意外ではあった。
しかし、初めて見る帝国の景色というだけで、私にはとても美しく見える。
「いいじゃない。静かな町も素敵だわ。早速町の中へ入ってみましょう。今日泊る宿を探さないとね!」
『宿なんてやってるかなぁ』
私が元気よく言うと、シリウスは難しい顔で町を見た。
***
「本当に誰もいないわね」
『これはさすがにちょっとおかしくない?』
町の中を歩くこと、約一時間。
小さな町なので、ほとんどの場所を回り尽くしてしまったけれど、その間、誰も人を見ることがなかった。
建物の中を覗き込んで見ても、人が生活していた気配こそあるものの、肝心な人の姿はない。
死んでしまった町を歩いているような気分だった。
『何にもないとこだね……』
目の前に広がる光景に、思わず感嘆の声が漏れた。
少し寂れた建物のぽつぽつと立ち並ぶ、異国情緒あふれる町。
サフェリア王国と違い、装飾のないやけにシンプルな建物が多い。
小さな田舎町という感じの場所だ。
新鮮な光景に見惚れてしまう。
サフェリアの王宮を出た後、私は崖の真ん中に生える木にエリオット様からもらったショールを落とし、転落したように見せかけた。
ショールに血をつけるためにナイフで腕に傷をつけたので、傷口が今もちょっと痛い。
それにエリオット様からもらった大切なショールを手放してしまったことで心も痛んでいたけれど、この痛みは新しい未来へ進むために必要なものだと考えることにした。
それから私は、マントを着て、目立つ銀色の髪をフードの中に隠し、持っていたわずかなお金で安宿に泊まりながら国境まで旅をした。
幸い、私の持っている服は貴族だとは到底思われないような質素な服がほとんどだったので、服に関しては市井で目立つ心配はなかった。
そして今日の朝、街を出た先にある森を潜り抜け、ようやく国境に出た。
そこでシリウスに頼んで国境を守る兵士たちを眠らせてもらい、隣国に不法入国してきたというわけなのだ。
「ここがラピシェル帝国なのね……。想像とは少し違ったけれど、素敵なところだわ」
『どこが? すごい寂れた町じゃん。店もないし、人影も見えないし』
シリウスの言う通り、目の前の町らしき場所は、簡素な建物が立ち並ぶ、人の姿が見えない寂しい場所だった。
こじんまりした町と言うよりは、町全体が廃墟と化していると言ったほうが近いのかもしれない。
ラピシェル帝国はサフェリア王国よりも発展した国と聞いていたので意外ではあった。
しかし、初めて見る帝国の景色というだけで、私にはとても美しく見える。
「いいじゃない。静かな町も素敵だわ。早速町の中へ入ってみましょう。今日泊る宿を探さないとね!」
『宿なんてやってるかなぁ』
私が元気よく言うと、シリウスは難しい顔で町を見た。
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「本当に誰もいないわね」
『これはさすがにちょっとおかしくない?』
町の中を歩くこと、約一時間。
小さな町なので、ほとんどの場所を回り尽くしてしまったけれど、その間、誰も人を見ることがなかった。
建物の中を覗き込んで見ても、人が生活していた気配こそあるものの、肝心な人の姿はない。
死んでしまった町を歩いているような気分だった。