「お前さえいなければ」と言われたので死んだことにしてみたら、なぜか必死で捜索されています
「そうなんですね。私は、セラフィ……あ、いえセラと申します。ただのセラです」

「セラちゃんかー。名前まで可愛いんだね。よろしく、セラちゃん」

 ルークさんはにっこり笑ってそう言った。

 警戒しようと思った先に無邪気な笑みを向けられ、ついつられて笑顔になってしまった。

 何しろ人に純粋な笑顔を向けられるのは久しぶりだったから。

『セラ! 本当に気をつけなよ! こいつなんかチャラチャラしてそうだし警戒した方がいいよ!!』

「シリウスったら。いい人そうじゃない」

 私が肩に乗ったシリウスとこそこそ話していると、ルークさんはじっとシリウスの方を見た。


「セラちゃん、その肩に乗ってる猫……精霊?」

「ルークさん、シリウスが見えるんですか? そうなんです、シリウスは私の契約精霊なんですよ!」

 シリウスの姿が猫だとわかるほどはっきり見える人にはあまりお目にかかれないので、つい弾んだ声で答えてしまった。

 シリウスの姿が見えるのなら、世にも愛らしいその姿をじっくり見て欲しい。

 私は嬉しくなって、シリウスの脇に手を入れて、ルークさんに見えやすいように掲げる。

 シリウスには嫌そうな顔をされてしまった。


「え、待って、ちょっと待って。セラちゃん、契約精霊って本気で言ってる? この精霊、大精霊だよね?」

「知ってるんですか?」

「うん。って言っても、昔本で読んだことがあるだけだけど……。この世に三体しかいない大精霊のうちの一体だって書いてあった。すごい魔力を持っているって」

「すごい、シリウス、そんなに有名なのね! 本にまで載ってるなんて!」

 私はびっくりしてシリウスを見た。

 シリウス本人はよく自分を大精霊だと言ってふんぞり返っているけれど、大精霊らしいところは一度も見たことがなかったので、正直本当なのか疑っていた。

 しかし、ルークさんの話によればあながち嘘でもなかったらしい。


『当然だよ。僕ほどの力を持った精霊はいないからね』

「すごいなぁ。まさか本物にお目にかかれるなんて。ねぇ、何か魔法使ってみてよ! 大精霊の魔法ってすごいんでしょ!?」

 ルークさんはシリウスに向かって目を輝かせて頼んでいる。

 魔法を要求されると、得意げだったシリウスの顔は途端に歪み、『また今度ね』と素っ気なく返していた。シリウスにはすごい魔法は使えないのだ。

 それでもルークさんは諦めきれないようで何度もシリウスに魔法を使ってみてと頼んでいた。

 シリウスの顔がだんだん気まずそうになっていく。
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