「お前さえいなければ」と言われたので死んだことにしてみたら、なぜか必死で捜索されています
「そこに精霊がいるんですか? 私にはぼんやりしか見えないんですけれど。よかったです。少しでも戻ってきたなら」

「いや、少しでもって……。俺もほかの魔術団員も数が月かけても全く精霊を戻って来させられなかったのに……」

 ルークさんは呆然とこちらを見ていた。


「本当ですか? お役に立てたでしょうか。私は精霊に好かれない体質みたいなので、まさか戻って来てくれるとは思いませんでした。遠くの精霊たちが元気になってくれればいいとは思ったんですけれど」

「役に立つなんてものじゃ……。ていうか精霊に好かれない体質? そんなはずはないよ。でなきゃ大精霊と契約出来るわけないし」

「シリウスは特別なんです。精霊に逃げられてばかりの私と契約してくれました。シリウス以外の精霊は、いつも私が近づくと逃げてしまうんです……」

 少し悲しくなりながら説明すると、ルークさんは難しい顔になる。

 それから、おそらく精霊がいる場所に視線を彷徨わせて言った。


「セラちゃん。魔力を抑えてみることは出来る?」

「出来ると思いますが、出来損ないの私が魔力を抑えたら多分魔力はゼロになってしまいます」

「ゼロになってもいいからさ。やってみて」

 ルークさんがそう言うので、私はとりあえず試してみることにした。


 魔力のある人間は、普段意識しなくても体から小さく魔力が漏れ出している。意識すれば、その漏れ出す魔力を少なくすることが出来るらしい。

 出来損ないの私があえて魔力を抑える必要はないと思ったので試したことはないけれど、昔読んだ魔法の教本に書いてあった。

 私は初めて自分から漏れ出す魔力に意識を向け、溢れ出ないように調整してみる。


「……えっ」

 やってみた途端、見えた光景に驚いた。

 今までぼんやりとしか見えなかったはずのシリウス以外の精霊たちが、はっきり見えたのだ。

 しかし、驚いて魔力を抑えるのを辞めた途端、精霊たちは再び見えなくなる。


「ルークさん、あの……! 今精霊が見えたのですが……!!」

「やっぱり。もう一回試してみてよ。今度はもっと長く」

「はい……」

 私は再び魔力を抑えてみる。

 すると、また見えなかったはずの精霊たちの姿が見えた。今度は彼らの姿や表情をじっくり観察してみる。

 精霊たちは、こちらをじっと見ていた。

 怯えた表情をしていたり、仲間同士で抱き合ったりして、なんだかこちらを怖がっているように見える。なかにはルークさんの影に隠れている精霊もいた。


「ルークさん、精霊が見えるのですが……私、なんだか怖がられているようで……」

「多分、セラちゃんの魔力が強すぎて怖いんだよ。圧倒されているっていうかな。嫌われているわけじゃないと思うよ」

「え……っ?」

 私は目をぱちくりして精霊たちを見る。どの子もみんな、怯えた顔をしながらも私のことをじっと見ている。


「こ、怖くないよー?」

 どうにか近づいてきてもらいたくて、笑顔を作って精霊たちに手を伸ばしてみる。しかし精霊たちはぎょっとした顔をして、飛んで行ってしまった。

 精霊たちは少し離れた建物の方に集まって、ぷるぷる震えている。
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