「お前さえいなければ」と言われたので死んだことにしてみたら、なぜか必死で捜索されています
「ごめんごめん。そうだよね、シリウス。先に報酬を提示するべきだったね」

「ルークさん、私はそんな……」

「一週間につき金貨一枚でどうかな? 少ない?」

「金貨……!? 一週間で……!?」

 私が今まで目にしたことのあるお金は、神殿の奉仕活動に行ったときにお礼としてもらった銅貨くらいだ。金貨なんて見たこともない。

 銅貨は使う機会がなく長年ただ貯めるだけだったので、ここまでの旅はそれで何とかなったけれど、近いうちになくなるだろうとは思っていた。

 しかし金貨が一枚あれば、しばらく旅を続けるのに困らないのではないか。


「金貨なんて……もらうわけには……」

「それとセラちゃん、旅をしてきたって言ってよね。泊る場所はある? 見ての通りこの町には今営業している宿はないけど、よかったら隣町の宿まで案内するよ。宿代はもちろん魔術師団から出す。当然隣町までの送迎もする」

「そんな……! そこまでしてもらうわけには!」

 私がおろおろしていると、シリウスは私の肩から言う。

『ありがたく受け取っちゃいなよ。お金と宿があればラピシェル帝国でやっていけそうじゃん』

「でも、いいのかしら」

『いいに決まってるだろ。セラの能力にはそれだけの価値があるってこと。サフェリア王国の奴らは誰も気づいてなかったけど』

 迷う私に、シリウスがきっぱりと言う。

 ルークさんは私の方に笑顔を向けた。


「遠慮せずに受け取って欲しいな。セラちゃんに協力してもらえたらすごく助かるんだ」

「私でお役に立てるでしょうか……」

「うん。セラちゃんの力が必要なんだ」

 ルークさんの言葉が真っ直ぐ胸に響く。

 本当に私で、そんな報酬をもらえるほど役に立てるだろうか。祖国で言われ続けてきた出来損ないという言葉がぐるぐる頭を巡る。

 けれど、気がついたら私の口から言葉がこぼれ落ちていた。


「ぜひ、協力させてください……!」

「引き受けてくれる!? ありがとう、セラちゃん!」

 私の答えに、ルークさんはぱっと笑顔になった。

 ちゃんとできるかどうかはわからないけれど、やれるだけやってみよう。

 私の心には、今までよりずっと前向きな気持ちが満ちていた。
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