「お前さえいなければ」と言われたので死んだことにしてみたら、なぜか必死で捜索されています
「なんだその顔は。俺が何かおかしなことを言ったか」

「い、いえ……。都合の問題でしたら、セラフィーナ様の姉君二人のどちらかを新しい婚約者にすることも出来るのでは?」

「嫌だ。それでは陛下やシャノン公爵を喜ばせるだけだ。俺はシャノン家の出来損ないを婚約者にして、陛下たちに嫌がらせをしたいのだと何度も言っているだろう」

「確かにいつもそう仰られていますが……。それなら聖女と謡われるアメリア様を新しい婚約者になさっては? 能力は十分で国民からの人気もありますし、彼女であればシャノン家の令嬢を差し置いて婚約者に選んでも反対は出にくいと思いますよ。陛下やシャノン公爵の思惑を斥けられるのでは?」

「そ、それは……。でも、俺はアメリアはどうにも苦手なんだ。笑顔に裏がありそうで気味が悪い。べたべたくっついてくるのも気にいらない。セラならそのようなことはないからな」

「結局セラフィーナ様がいいんじゃないですか……」

 俺がどうにかセラを探す理由を説明すると、レオンは腹立たしくも哀れむような目を向けてきた。頬がかっと熱くなる。


「……うるさい! 用がないのならもう戻れ!! 俺は俺の利益のためにセラフィーナを探しているだけだ!!」

「はいはいわかりましたよ。都合がいいからセラフィーナ様を婚約者にしておきたいんですね。そういうことにしておきます」

「なんだその反応は! 全く信じていないだろう!!」

 レオンは俺の顔をちらりと見ると、やれやれと手を挙げる。

「大丈夫です。私はちゃんとわかっていますので。ご命令の通り下がりますが、こちらのハーブティーだけでも飲んでくださいね。メイドに作らせた疲れに効くものですから」

「……わかったからさっさと行け」

 レオンは俺に向かって憐れみの滲んだ笑みを向けると、扉を開けて出て行った。

 部屋に残された俺には、悶々とした気持ちだけが残る。


(……別にセラが大切なわけじゃない。セラが一番俺に都合がいいから見つけたいだけだ)

 セラの姉たちやアメリアのほかに、もっと婚約者として都合のいい存在がいれば、すぐにでもそちらを選んでやる。

 しかし、その思いとは裏腹に、セラの顔が頭から離れなかった。

 頭から追い出そうとするたびに、余計にセラのことで頭が埋まって行く。

 レオンの言葉が頭に何度も蘇った。
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