「お前さえいなければ」と言われたので死んだことにしてみたら、なぜか必死で捜索されています

6.ラピシェル帝国での生活

「わー! 人が! 人がいました!」

「そりゃいるよ、町だもん」

 馬車の中で窓から見えた景色に興奮して叫ぶと、向かいに座っていたルークさんがけらけら笑いながら言った。


 人が誰もいないレピドの町から出た後、私はルークさんの乗って来たという馬車に乗せてもらい、隣町までやって来た。

 ここはティエルの町と言うらしい。

 レピドの町を見たときも感動したけれど、やはりちゃんと人のいる町の景色は異国感があってより感動してしまう。

「すごいわね、シリウス。これが帝国なのね!」

『さすがサフェリア王国より賑やかだね』

 一緒に窓を覗いていたシリウスも、感心した声で言う。

 熱心に窓の外を眺めている私たちを見てルークさんはおかしそうな顔をする。


「そんなに帝国の景色が珍しい?」

「はい、外国に来ること自体初めてなので……! サフェリア王国と全然違うんですね」

「帝国はどこもがやがやしてるよね。俺はサフェリア王国も好きだよ。長閑だし精霊もたくさんいるし」

「まぁ、祖国をそんな風に言ってもらえると嬉しいです」

 逃げ出して来た国といえ祖国は祖国なので、褒めてもらえるのは嬉しかった。

 あの国はなんだかんだいって私の故郷で、何より将来エリオット様が治める国なのだ。

 私はもう帰ることはないかもしれないけれど、平和で豊かな日々が続いてくれたらいいと思う。

 サフェリア王国を褒められてつい頬を緩ませていると、ルークさんが身を乗り出して来た。


「セラちゃん、あのさ、気になってたんだけど」

「何ですか?」

「セラちゃんって恋人いるの? って、そんな可愛いんだからいるよね」

 ルークさんは興味津々という顔で尋ねてくる。

 私の膝の上にいたシリウスが眉間に皺を寄せた。


『ちょっと魔術師、セラを口説かないでよ』

「いや、気になっただけだって。聞くくらいいいでしょ?」

『セラは僕の契約者なんだから、半端な奴には渡さないからね』

 シリウスがルークさんを威嚇し始めたので、私は慌ててシリウスを止める。

 それから私は上を見上げてルークさんに聞かれたことを考えてみた。
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