「お前さえいなければ」と言われたので死んだことにしてみたら、なぜか必死で捜索されています
「エリオット様……! セラフィーナ様に同情するのはわかりますが、それでは国のためになりませんわ! 王妃には家柄だけでなく能力も必要です!」

 アメリア様はそう言った後、はっとした顔になり、困ったような笑みを浮かべて私を見た。

 お優しいアメリア様は、本当は厳しい言葉など言いたくなかったのだろうけれど、国のためを思ってあえて言いづらいことを口にしたのだろう。

 私は一瞬でもエリオット様の言葉に甘えそうになった自分を反省する。


「い、いや、しかし、アメリア。王家とシャノン公爵家は代々繋がりが強い上、神殿も婚約解消に反対していてだな」

「そんなことどうにかするべきですわ! このまま出来損ないの精霊師を王妃にして、国が傾いてもいいのですか!?」

 エリオット様はどこか慌てた様子でアメリア様に言葉を返すが、アメリア様は引かない。

 それにしても、やっぱりアメリア様も私のことを出来損ないだと思っているのかと思うと、ちょっぴり胸が痛くなる。


「……セラフィーナ。話はもう終わりだ。別邸に戻れ」

 アメリア様に詰め寄られながら、エリオット様はこちらを見てそう言った。

 私は二人に向かって頭を下げ、退室する。


 部屋を出て、一人になったところで、私の首元からぽわぽわと小さな光の玉が飛び出てきた。

 光の玉は私の顔の前まで来ると、猫の姿に形を変える。

『なんなんだよ、あいつら! 勝手なことばかり言って! セラもどうして言い返さないの!?』

 ふわふわした白い毛に、まん丸の青い目。背中に生えた小さな羽根。

 世にも愛くるしいこの猫らしき生き物は、実は猫ではなく、私が契約した精霊だ。


「シリウス、そんなことを言っては駄目よ。お二人とも国のためを思って、言いづらいことを言ってくれただけなんだから」

『国のため!? どこが!? 言いがかりも甚だしいじゃん! あいつら、セラが朝から晩まで精霊に力を送り続けているのが見えてないのか……!?』

 シリウスは丸い目を尖らせて、ぷんぷん怒っている。
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