「お前さえいなければ」と言われたので死んだことにしてみたら、なぜか必死で捜索されています
恋人というのは、婚約者とは違うものだろうか。多分、違うものだろう。
ほかの人の場合はともかく、私の場合はただエリオット様がシャノン家の娘の誰かと婚約しなければならなくて、仕方なく選んでもらっただけだから。
どちらにせよサフェリア王国から逃げてきた私はもう婚約者ではない。
エリオット様の新しい婚約者には、アメリア様が収まるのだろう。
悲しい気分になりそうだったので、私は気持ちを振り払うよう笑顔を作って答えた。
「いません。好きな人ならいるんですが」
「へぇー! どんな人?」
「とっても素敵な方です。慈悲深くて、偏見がなくて、すごくお優しい方ですわ」
エリオット様を思い浮かべながら話す私に、ルークさんは微笑みながらうなずいてくれる。
「セラちゃんに愛されてるなんてその人は幸せ者だね」
「そ、そんなことないです。私なんて全然相手にされてませんでしたから」
私を興味なさそうな目で見るエリオット様や、私がいなければアメリア様と結婚出来るのにとため息を吐いていたエリオット様の顔が思い浮かぶ。
悲しくなって、つい言わなくてもいいことまで話してしまう。
「その人のそばにはいつも私よりずっと綺麗で才能に溢れた方がいたんです。あのような方に見慣れていたら、きっと私のことなんて霞んで見えていたと思います……」
つい暗い顔になってしまう私に、ルークさんは目をぱちくりしながら言う。
「本当に? それ、きっとそいつが見る目なかったんだよ。セラちゃんみたいな子に好かれて別の子を選ぶなんて」
「いえ、そんなことは……!」
「俺だったらセラちゃんに好きって言われたら、迷わずセラちゃんを選ぶんだけどな」
ルークさんはこちらを見てにこにこ笑いながら言う。
そんなことを言われたのは初めてで、思わず赤くなってしまった。私はエリオット様が好きだと言うのに。
『おい魔術師。だからセラを口説くなって言ってるだろ。エリオットに見る目がないのは同意するけど』
「セラちゃんの好きな人、エリオットって言うんだ。かっこいい名前。サフェリア王国の王太子様と同じだね」
『あ』
「そ、そそそれは……!」
「っていってもそんな珍しい名前でもないけど」
ルークさんはあっさりした態度で言う。特に怪しんだわけではないようだ。
私はほっと胸を撫で下ろした。
「シリウス、不用意なこと言ってはだめよ」
『うん、今のは僕が悪かった。ごめん』
私がこっそり耳打ちすると、シリウスは気まずそうな顔をして珍しく素直に謝った。
ほかの人の場合はともかく、私の場合はただエリオット様がシャノン家の娘の誰かと婚約しなければならなくて、仕方なく選んでもらっただけだから。
どちらにせよサフェリア王国から逃げてきた私はもう婚約者ではない。
エリオット様の新しい婚約者には、アメリア様が収まるのだろう。
悲しい気分になりそうだったので、私は気持ちを振り払うよう笑顔を作って答えた。
「いません。好きな人ならいるんですが」
「へぇー! どんな人?」
「とっても素敵な方です。慈悲深くて、偏見がなくて、すごくお優しい方ですわ」
エリオット様を思い浮かべながら話す私に、ルークさんは微笑みながらうなずいてくれる。
「セラちゃんに愛されてるなんてその人は幸せ者だね」
「そ、そんなことないです。私なんて全然相手にされてませんでしたから」
私を興味なさそうな目で見るエリオット様や、私がいなければアメリア様と結婚出来るのにとため息を吐いていたエリオット様の顔が思い浮かぶ。
悲しくなって、つい言わなくてもいいことまで話してしまう。
「その人のそばにはいつも私よりずっと綺麗で才能に溢れた方がいたんです。あのような方に見慣れていたら、きっと私のことなんて霞んで見えていたと思います……」
つい暗い顔になってしまう私に、ルークさんは目をぱちくりしながら言う。
「本当に? それ、きっとそいつが見る目なかったんだよ。セラちゃんみたいな子に好かれて別の子を選ぶなんて」
「いえ、そんなことは……!」
「俺だったらセラちゃんに好きって言われたら、迷わずセラちゃんを選ぶんだけどな」
ルークさんはこちらを見てにこにこ笑いながら言う。
そんなことを言われたのは初めてで、思わず赤くなってしまった。私はエリオット様が好きだと言うのに。
『おい魔術師。だからセラを口説くなって言ってるだろ。エリオットに見る目がないのは同意するけど』
「セラちゃんの好きな人、エリオットって言うんだ。かっこいい名前。サフェリア王国の王太子様と同じだね」
『あ』
「そ、そそそれは……!」
「っていってもそんな珍しい名前でもないけど」
ルークさんはあっさりした態度で言う。特に怪しんだわけではないようだ。
私はほっと胸を撫で下ろした。
「シリウス、不用意なこと言ってはだめよ」
『うん、今のは僕が悪かった。ごめん』
私がこっそり耳打ちすると、シリウスは気まずそうな顔をして珍しく素直に謝った。