「お前さえいなければ」と言われたので死んだことにしてみたら、なぜか必死で捜索されています
「さてと、行きましょうか、シリウス」

『うん。どんな部屋なんだろうね』

 シリウスと一緒にお部屋を探す。

 部屋は三階の角にあった。木製の扉を開けると、ベッドと机と大きな窓のある綺麗なお部屋が現れる。

「まぁ、とっても素敵な部屋ね!」

『簡素だけど結構綺麗なところだね』

 部屋を見渡したシリウスは感心した声を出す。

 私はベッドに麻の鞄を置くと、すぐさま窓の方へ駆けて行った。


「さっき馬車で通って来た道が見えるわ!」

『本当だ。お店とか色々見える』

「なんだか興奮しちゃうわね、シリウス。あの通り歩いてみたいなぁ」

 私がシリウスと窓の外を興奮気味に眺めていると、扉を叩く音がした。

 返事をして扉を開けると、そこにはルークさんがいた。


「セラちゃん、ごめん! 俺ちょっと皇女様からの命令で町の巡回に行くことになっちゃった。何か緊急の用があったら、四階のホールに行ってくれる? セラちゃんのことは説明しておいたから、魔術師団の誰かが何とかしてくれるはずだから」

「あっ、はい! ありがとうございます。巡回頑張ってください!」

「ありがと。行ってくるねー」

 ルークさんは先ほどと同じように、ひらひら手を振って立ち去ろうとする。

 その背中を見ていたら、私はうずうずして無意識に声が出ていた。

「あの、ルークさん!」

「何―?」

「私も一緒に行ってはいけませんか?」

「え?」

 ルークさんは目をぱちくりする。

 町を見てみた過ぎて衝動的に言ってしまったけれど、よく考えたらお仕事なのについて行っては迷惑かもしれないと、言った後になって冷静になった。


「ティエルの町を歩いてみたくて……。でも、お仕事なのにお邪魔ですよね」

「いや、いいよ! 行こう行こう! セラちゃんも一緒に来てくれるなら嬉しいな」

 ご迷惑かと思ったけれど、ルークさんはあっさりと了承してくれた。

 ルークさんは楽しそうな声で、「巡回のついでに色々案内してあげるね!」と言ってくれる。

 シリウスには呆れた顔で見られてしまったけれど、私はティエルの町を歩けることにすっかり浮かれて、気にする暇はなかった。


***

「ここがティエル教会! 町の人は日曜日になるとみんなここにお祈りに来るんだ。司教様はちょっと面倒だけどいいとこだよ」

「まぁ、素敵なところ……! 天使の像がとっても綺麗です」

「でしょー。で、あっちはティエルの町で一番人気の食堂。俺も任務の帰りによく行くんだ。肉料理がおいしいよ。おすすめは鹿肉の木の実ソースがけ」

「わぁ、おいしそう。食べてみたいです!」

「今度行ってみようか。あ、あっちは帝都から来たデザイナーが出店した洋服店! 常に女の子が殺到してる。セラちゃんも興味ある?」

「あります! 故郷では洋服店なんて入ったことなかったので……!」

「えっ、洋服店入ったことないんだ。セラちゃんの故郷って結構都会から離れた場所? じゃあ、そこも今度行ってみよう!」


 ティエルの町を歩きながら、ルークさんは建物を指さして色々な場所を説明してくれた。
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