「お前さえいなければ」と言われたので死んだことにしてみたら、なぜか必死で捜索されています
こんな風に町をゆっくり歩くなんて、サフェリア王国にいたときもほとんどなかった。
逃亡したときには町に潜り込んだりしたけれど、その時は正体を気づかれないようにするのに必死で楽しむ余裕なんてなかったし。
初めての経験にわくわくしてしまう。
「楽しいね、シリウス」
『うん。それなりに。サフェリアより開放的で気に入ったかも』
「まぁ、シリウスが気に入るなんて珍しい。でも、そうね。なんだか自由な感じのする町ね」
ルークさんは私がシリウスと話しているのを得意げな顔で聞いていた。
私と同じように、ルークさんも祖国を褒められるのは嬉しいのかもしれない。
『この町いいところだと思うけどさ……。微妙に空気が悪くない? 初日に行ったレピドの町ほどじゃないけど』
シリウスは通りをきょろきょろ見回しながら言う。
私は気づかなかったけれど、言われてみると空気に若干の淀みを感じる。
ルークさんはシリウスの言葉に神妙な顔でうなずいた。
「そうなんだ。ここもレピドの町と同じく精霊が減っていて、その分瘴気が侵食し始めている」
『やっぱり。ってことは、放っておいたらここもあの町みたいに荒廃しちゃうんじゃない?』
「シリウスの言う通りだよ。俺もずっとそれを心配してたんだ。これ以上精霊が出て行かないように対策しないとまずいって。でも、前にも言った通りこの国では精霊を信じてないから、陛下や皇女様に言っても全然取り合ってもらえなくて……」
ルークさんはがっくり肩を落としてそう言った。
シリウスは呆れた声で、『ダメな国だね』と吐き捨てる。
私は改めて町を見渡してみた。
活気のある賑やかな町。
しかし、やはりここも精霊の気配が少ない。わずかに見える精霊たちもどこか元気がなく見える。
「ルークさん、それではレピドの町と同じように私が力を送ったら、精霊が戻って来てくれるでしょうか?」
「うん、セラちゃんの能力があればここにも精霊を呼び戻せるかも。でも、ここにはもう一つ問題があって……」
ルークさんはそう言うと目を伏せる。
すると、後ろから怒鳴り声が聞こえてきた。
「ルーク・アーレント!! お前、また神聖なこの町にふざけた迷信を持ち込みに来たのか!!」
「うわ、司教様……」
後ろを向くと、そこには白いローブに身を包んだ灰色の長い髪の男性がいた。
年齢は二十代前半くらいだろうか。繊細な顔立ちで、白い服も相まってまるで絵画から抜け出して来た天使のように見える。
しかし儚げな雰囲気とは裏腹に、その顔は腹立たしげに歪んでいた。
「全く、精霊など信じるに足らないと何度説明したらわかるんだ。この国は女神ラピス様によって守られていると言うのに……」
「いや、司教様が女神を信仰してるのはよく知ってるけどさぁ。精霊だってこの国のためにいつも働いてくれてるんだって」
ぶつぶつ文句を言っている司教様に、ルークさんはなだめるように言っている。
逃亡したときには町に潜り込んだりしたけれど、その時は正体を気づかれないようにするのに必死で楽しむ余裕なんてなかったし。
初めての経験にわくわくしてしまう。
「楽しいね、シリウス」
『うん。それなりに。サフェリアより開放的で気に入ったかも』
「まぁ、シリウスが気に入るなんて珍しい。でも、そうね。なんだか自由な感じのする町ね」
ルークさんは私がシリウスと話しているのを得意げな顔で聞いていた。
私と同じように、ルークさんも祖国を褒められるのは嬉しいのかもしれない。
『この町いいところだと思うけどさ……。微妙に空気が悪くない? 初日に行ったレピドの町ほどじゃないけど』
シリウスは通りをきょろきょろ見回しながら言う。
私は気づかなかったけれど、言われてみると空気に若干の淀みを感じる。
ルークさんはシリウスの言葉に神妙な顔でうなずいた。
「そうなんだ。ここもレピドの町と同じく精霊が減っていて、その分瘴気が侵食し始めている」
『やっぱり。ってことは、放っておいたらここもあの町みたいに荒廃しちゃうんじゃない?』
「シリウスの言う通りだよ。俺もずっとそれを心配してたんだ。これ以上精霊が出て行かないように対策しないとまずいって。でも、前にも言った通りこの国では精霊を信じてないから、陛下や皇女様に言っても全然取り合ってもらえなくて……」
ルークさんはがっくり肩を落としてそう言った。
シリウスは呆れた声で、『ダメな国だね』と吐き捨てる。
私は改めて町を見渡してみた。
活気のある賑やかな町。
しかし、やはりここも精霊の気配が少ない。わずかに見える精霊たちもどこか元気がなく見える。
「ルークさん、それではレピドの町と同じように私が力を送ったら、精霊が戻って来てくれるでしょうか?」
「うん、セラちゃんの能力があればここにも精霊を呼び戻せるかも。でも、ここにはもう一つ問題があって……」
ルークさんはそう言うと目を伏せる。
すると、後ろから怒鳴り声が聞こえてきた。
「ルーク・アーレント!! お前、また神聖なこの町にふざけた迷信を持ち込みに来たのか!!」
「うわ、司教様……」
後ろを向くと、そこには白いローブに身を包んだ灰色の長い髪の男性がいた。
年齢は二十代前半くらいだろうか。繊細な顔立ちで、白い服も相まってまるで絵画から抜け出して来た天使のように見える。
しかし儚げな雰囲気とは裏腹に、その顔は腹立たしげに歪んでいた。
「全く、精霊など信じるに足らないと何度説明したらわかるんだ。この国は女神ラピス様によって守られていると言うのに……」
「いや、司教様が女神を信仰してるのはよく知ってるけどさぁ。精霊だってこの国のためにいつも働いてくれてるんだって」
ぶつぶつ文句を言っている司教様に、ルークさんはなだめるように言っている。