「お前さえいなければ」と言われたので死んだことにしてみたら、なぜか必死で捜索されています
8.面会 ※セラの姉視点
妹のセラフィーナが行方不明になったのだと言う。
王家からの使いがそう告げたとき、両親は大騒ぎしていた。
妹といっても、もう何年も会っていない子だ。そもそも妹がこのお屋敷にいた頃から滅多に会うことはなかった。
妹は、代々精霊師として名を馳せてきたシャノン家に生まれたにも関わらず、精霊をちゃんと見ることすら出来ない出来損ないだった。
私は妹がうっとうしくてならず、掃除をしているのを見つけるとバケツを蹴ったり、あの子が持っている粗末な服を破いたりして立場をわからせてやっていた。
しかし、そんな妹が、十歳のときにこの国の王太子エリオット様の婚約者になった。
本当は私かお姉様がエリオット様の婚約者になるはずだった。
なのにシャノン家にやってきたエリオット様は、どこからか妹のセラフィーナを見つけてきて、あろうことかセラフィーナとの婚約を決めてしまった。
あの時の屈辱は、七年経った今でもはっきり覚えている。
しかし、そのセラフィーナが行方不明になったらしい。
使いによると、王宮で妹が住まわされていた別邸には遺書が残されていたそうだ。
「きっと王宮でも散々蔑まれて嫌になったのね。いい気味だわ」
私は肩に乗っていた私の契約精霊に話しかける。精霊はぎこちなくうなずいたように見えた。
精霊の言葉はわからないけれど、きっとこの子もセラフィーナがいなくなって喜んでいるのだろう。
***
「デイジー、明日は王宮に行くから準備をしておくように」
「え、明日ですか?」
その日の晩、珍しくお父様が私の部屋までやって来てそう告げた。
「ああ。エリオット殿下がセラフィーナがいなくなったことについて直接謝罪したいとおっしゃってるんだ」
「まぁ、律儀な方ですわね。遺書があるということは、セラフィーナが勝手に死んだだけでしょうに」
「まだ死んだと決まったわけではないさ。しかし、エリオット殿下が話をしてくれる気になったのなら都合がいい。悲しいことに、あの方は我がシャノン家を疎まれていたからな。せっかくのチャンスなのだから、デイジーも王宮に行って殿下に好感を持ってもらえるよう努めるんだ」
「そうですわね。私、今度こそエリオット様の心を射止めてみせますわ!」
私は勢い込んでうなずいた。
七年前に逃したチャンスが再び巡ってきたかもしれない。
どんなドレスを着て行こうかと考えながら、ふと姉はどうなのだろうと気になったので尋ねてみた。
「お父様。明日はルーシーお姉様も一緒に行くんですの?」
「いいや、ルーシーには今侯爵家の令息から縁談が来ているから、今回はやめておいたほうがいいだろう。今回はデイジーだけ連れて行く」
それでは、今回チャンスを得たのは私だけということだ。
俄然やる気が湧いてくる。
せっかく巡って来たチャンスなのだから、絶対にものにしないと。
王家からの使いがそう告げたとき、両親は大騒ぎしていた。
妹といっても、もう何年も会っていない子だ。そもそも妹がこのお屋敷にいた頃から滅多に会うことはなかった。
妹は、代々精霊師として名を馳せてきたシャノン家に生まれたにも関わらず、精霊をちゃんと見ることすら出来ない出来損ないだった。
私は妹がうっとうしくてならず、掃除をしているのを見つけるとバケツを蹴ったり、あの子が持っている粗末な服を破いたりして立場をわからせてやっていた。
しかし、そんな妹が、十歳のときにこの国の王太子エリオット様の婚約者になった。
本当は私かお姉様がエリオット様の婚約者になるはずだった。
なのにシャノン家にやってきたエリオット様は、どこからか妹のセラフィーナを見つけてきて、あろうことかセラフィーナとの婚約を決めてしまった。
あの時の屈辱は、七年経った今でもはっきり覚えている。
しかし、そのセラフィーナが行方不明になったらしい。
使いによると、王宮で妹が住まわされていた別邸には遺書が残されていたそうだ。
「きっと王宮でも散々蔑まれて嫌になったのね。いい気味だわ」
私は肩に乗っていた私の契約精霊に話しかける。精霊はぎこちなくうなずいたように見えた。
精霊の言葉はわからないけれど、きっとこの子もセラフィーナがいなくなって喜んでいるのだろう。
***
「デイジー、明日は王宮に行くから準備をしておくように」
「え、明日ですか?」
その日の晩、珍しくお父様が私の部屋までやって来てそう告げた。
「ああ。エリオット殿下がセラフィーナがいなくなったことについて直接謝罪したいとおっしゃってるんだ」
「まぁ、律儀な方ですわね。遺書があるということは、セラフィーナが勝手に死んだだけでしょうに」
「まだ死んだと決まったわけではないさ。しかし、エリオット殿下が話をしてくれる気になったのなら都合がいい。悲しいことに、あの方は我がシャノン家を疎まれていたからな。せっかくのチャンスなのだから、デイジーも王宮に行って殿下に好感を持ってもらえるよう努めるんだ」
「そうですわね。私、今度こそエリオット様の心を射止めてみせますわ!」
私は勢い込んでうなずいた。
七年前に逃したチャンスが再び巡ってきたかもしれない。
どんなドレスを着て行こうかと考えながら、ふと姉はどうなのだろうと気になったので尋ねてみた。
「お父様。明日はルーシーお姉様も一緒に行くんですの?」
「いいや、ルーシーには今侯爵家の令息から縁談が来ているから、今回はやめておいたほうがいいだろう。今回はデイジーだけ連れて行く」
それでは、今回チャンスを得たのは私だけということだ。
俄然やる気が湧いてくる。
せっかく巡って来たチャンスなのだから、絶対にものにしないと。