「お前さえいなければ」と言われたので死んだことにしてみたら、なぜか必死で捜索されています
***
王宮に着くと、テーブルとソファがあるだけの小さな部屋に通された。
これはあくまで個人的な面会らしい。
部屋にはエリオット様と、臣下らしき眼鏡の青年、それから数人の護衛しかいない。
お父様と私は、殿下に勧められてソファに腰かけた。
至近距離で見るエリオット様は、いつにも増して美しかった。
金色の髪に水色の目。金の刺繍の入った赤いコートがよく似合っている。
パーティー会場で遠目に見るエリオット様よりも、断然素敵だ。
エリオット様はこちらをじっと見た後で口を開く。
「シャノン公爵、よく来てくれた。……そちらは、デイジー嬢か?」
エリオット様は、若干戸惑った顔で尋ねてきた。
私はとびきりの笑顔を作ってうなずいた。
「はい、デイジー・シャノンと申します! 殿下に名前を覚えていただけたなんて嬉しいですわ」
「あ、ああ。あなたにまで足を運ばせてしまい申し訳ない」
精一杯愛らしい笑みを作ったのに、殿下はさらに困惑した顔になってしまった。
納得のいかない気持ちになりながらも、エリオット様とお父様の話を聞く。
「シャノン公爵、公爵家の令嬢を預かっておきながら行方不明にしたこと、申し訳なかった。謝罪させて欲しい」
殿下は悲痛な顔でそう言って頭を下げる。
エリオット様はなぜか私たちシャノン家の人間を嫌っているようで、夜会で会ってもいつもいまいましそうな顔を向けるだけだった。
そんなエリオット様が今日は深刻な顔で謝罪している。
お父様はエリオット様に向かってにこやかに言葉を返した。
「頭をお上げください、エリオット殿下。王子殿下が気安く頭を下げるものではありません。娘の方こそ、勝手な真似をして大変なご迷惑をおかけしたようで申し訳ございませんでした」
お父様は、つい先日娘が行方不明になった父親とは思えないほど落ち着き払った声で言う。
エリオット様に気を遣っているわけではないことを私はよく知っている。
お父様はセラフィーナがいなくなろうがどこかで死のうがどうでもいいだけなのだ。
どうしてわかるのかと言ったら、私も同じ気持ちだから。
「いや、七年前に公爵家から無理矢理連れ出しておいて、セラフィーナを行方知れずにしたのはこちらの落ち度だ。本当に申し訳なかった。必ず見つけ出すと約束する」
「いいえ、殿下。殿下に謝罪を受けるようなことではありません。セラフィーナが自分で決めたことなのですから、そういう運命だったのでしょう」
お父様はにこやかにそう告げる。
エリオット様の顔が、若干引きつるのがわかった。
お父様、ここは娘を亡くしたばかりの父親として、演技でも神妙な顔をしておいたほうがよかったんじゃないかしら。
声に出すわけにはいかないので、心の内でだけ窘める。
あ、でもそういえばさっきは私も妹を亡くしたばかりの姉なのに、とびきりの笑顔で挨拶してしまったわ。
だからさっきはエリオット様に微妙な顔をされたのかと納得する。
次は注意しようとひそかに決意した。
王宮に着くと、テーブルとソファがあるだけの小さな部屋に通された。
これはあくまで個人的な面会らしい。
部屋にはエリオット様と、臣下らしき眼鏡の青年、それから数人の護衛しかいない。
お父様と私は、殿下に勧められてソファに腰かけた。
至近距離で見るエリオット様は、いつにも増して美しかった。
金色の髪に水色の目。金の刺繍の入った赤いコートがよく似合っている。
パーティー会場で遠目に見るエリオット様よりも、断然素敵だ。
エリオット様はこちらをじっと見た後で口を開く。
「シャノン公爵、よく来てくれた。……そちらは、デイジー嬢か?」
エリオット様は、若干戸惑った顔で尋ねてきた。
私はとびきりの笑顔を作ってうなずいた。
「はい、デイジー・シャノンと申します! 殿下に名前を覚えていただけたなんて嬉しいですわ」
「あ、ああ。あなたにまで足を運ばせてしまい申し訳ない」
精一杯愛らしい笑みを作ったのに、殿下はさらに困惑した顔になってしまった。
納得のいかない気持ちになりながらも、エリオット様とお父様の話を聞く。
「シャノン公爵、公爵家の令嬢を預かっておきながら行方不明にしたこと、申し訳なかった。謝罪させて欲しい」
殿下は悲痛な顔でそう言って頭を下げる。
エリオット様はなぜか私たちシャノン家の人間を嫌っているようで、夜会で会ってもいつもいまいましそうな顔を向けるだけだった。
そんなエリオット様が今日は深刻な顔で謝罪している。
お父様はエリオット様に向かってにこやかに言葉を返した。
「頭をお上げください、エリオット殿下。王子殿下が気安く頭を下げるものではありません。娘の方こそ、勝手な真似をして大変なご迷惑をおかけしたようで申し訳ございませんでした」
お父様は、つい先日娘が行方不明になった父親とは思えないほど落ち着き払った声で言う。
エリオット様に気を遣っているわけではないことを私はよく知っている。
お父様はセラフィーナがいなくなろうがどこかで死のうがどうでもいいだけなのだ。
どうしてわかるのかと言ったら、私も同じ気持ちだから。
「いや、七年前に公爵家から無理矢理連れ出しておいて、セラフィーナを行方知れずにしたのはこちらの落ち度だ。本当に申し訳なかった。必ず見つけ出すと約束する」
「いいえ、殿下。殿下に謝罪を受けるようなことではありません。セラフィーナが自分で決めたことなのですから、そういう運命だったのでしょう」
お父様はにこやかにそう告げる。
エリオット様の顔が、若干引きつるのがわかった。
お父様、ここは娘を亡くしたばかりの父親として、演技でも神妙な顔をしておいたほうがよかったんじゃないかしら。
声に出すわけにはいかないので、心の内でだけ窘める。
あ、でもそういえばさっきは私も妹を亡くしたばかりの姉なのに、とびきりの笑顔で挨拶してしまったわ。
だからさっきはエリオット様に微妙な顔をされたのかと納得する。
次は注意しようとひそかに決意した。