「お前さえいなければ」と言われたので死んだことにしてみたら、なぜか必死で捜索されています
 そんなことを考えていると、お父様が早速本題に入った。

「エリオット殿下、セラフィーナのことは残念ですが、見つからないのであれば仕方ありません。どうでしょう。我が家にはもう二人娘もいることですし、婚約者を変更なさっては。こちらにいるデイジーなどはいかがですか?」

 お父様が紹介してくれたので、私は身を乗り出すようにして言った。

「エリオット様! 私はセラフィーナと違って精霊をちゃんと見られますし、操れますわ! 妹と違って、ちゃんと人型の契約精霊もおります! どうか私を新しい婚約者にしくださいませんか?」

「い、いや……」

 どうにか好感を持ってもらおうとアピールしたら、エリオット様は困惑顔になってしまった。

 先ほど演技でも神妙な顔をしていようと決めたことを思い出してはっとする。


「いえ、突然そんなことを言われても困りますわよね……。妹がいなくなったショックで、つい気が動転してしまったのです……。お許しください……」

 精一杯悲しそうな表情を作って言い訳する。しかし、エリオット様は不審そうな顔をするばかりだった。


「……すまないが、婚約者を変更するつもりはない。そもそもセラフィーナが死んだと決まったわけではないのだぞ。それを行方不明になって一週間ほどで婚約者を変更するなど性急ではないか」

 エリオット様は不機嫌そうな声で言う。

 お父様は少し慌てたように言葉を返した。


「失礼いたしました。一刻も早くセラフィーナのおかけしたご迷惑を挽回しようと気が急いておりました。しかし、婚約者の変更を頭の片隅にでも留めておいてもらえないでしょうか」

「変えるつもりはないと言っているだろう。七年前から俺の気持ちは変わっていない。セラフィーナでなかったら、シャノン公爵家の令嬢と結婚するつもりはない」

 エリオット様ははっきりそう言った。

 エリオット様は私に視線を向けることすらなく、付け入る隙なんて全くないように思えた。

 七年前に感じたのと同じ屈辱感が胸に広がっていく。


 なぜセラフィーナなのだろう。

 どうしてあんな出来損ないが選ばれるのかわからない。

 妹よりも私の方が、ずっと王太子殿下の妃にふさわしいというのに。

 お父様もエリオット様の言葉が不服だったようで、固い声で問いかけている。
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