「お前さえいなければ」と言われたので死んだことにしてみたら、なぜか必死で捜索されています
 その日は、ティエルの町で待機しているルークさんの仲間の魔術師団の方数人と町を回ることになった。

 宿の四階、魔術師団の待機所のようになっているホールで、初めてちゃんと彼らと顔を合わせた。

「あなたがルーク様が見つけてきたという聖女様ですね!」

「えっ、あの、私は聖女ではなくただの精霊師で……」

「ルーク様がよくすさまじい力で精霊を呼び寄せるのに、本人は全然偉ぶってなくて天使みたいだって褒めてますよ」

「一度会ってみたかったんです、セラさん! お会いできて感激です!」

 魔術師団の人たちは口々に言う。

 団員の方たちも、なんというかルークさんと似て気さくな人たちばかりだ。


「お前らセラちゃんを囲んで困らせるなよ。早く支度して出発するぞ」

 ルークさんがそう言うと、魔術師団の方達は一斉に姿勢を正し、準備に取り掛かった。


『セラ、ルークって平団員じゃなかったのかな。意外。どのあたりの立ち位置なんだろうね』

 シリウスが私の頭の上に上ってルークさんたちを見ながら呟く。

「どうなのかしら。そういえば聞いたことがなかったわ」

『今度聞いてみてよ』

「そうね。後で聞いてみるわ」

 そういえば、ルークさんに魔術師団のことやどんな仕事をしているのかは聞いたことがなかった。聞いたら教えてもらえるだろうか。

 そんなことを考えながら私も出発の準備をして、宿を出た。


***


 ルークさんに聞いた通り、ティエルの町は病人で溢れていた。

 病院からは人が溢れ、随分と具合が悪そうなのに自宅で療養するしかない人もたくさんいるようだった。

「セラちゃん、ひとまず病院に入れなかった人たちを優先に見てくれるかな。病状が深刻な人たちのリストを作ったから順番に回って行こう」

「わかりました」

 私はルークさんや団員の方たちについて、病人がいるという家を回ることになった。

 最初の家を訪れてみると、そこには全身を瘴気で覆われながら苦しそうに寝ている青年がいた。

 私は急いで彼の寝ているベッドの前に跪いて、精霊を呼び寄せるように力を送る。

 すると、いつものように怯えながらも精霊がやって来てくれた。

 魔術師団の方たちが、後ろで驚いたような声を上げるのが聞こえる。


「あの、精霊さんたち……! この方瘴気で大変苦しんでいまして……! 精霊さんたちの力で瘴気を払ってあげてくれないでしょうか?」

 いつも、レピドの町で力を送るときは話しかけたりはしない(怯えて逃げられてしまうので)のだけれど、今回は病人の状況が深刻なので、一刻も早く瘴気を浄化してもらいたくて頼んでみた。

 魔力を押さえつけ、怖がらせませんようにと念じながらお願いする。

 どきどきしながら顔をあげると、集まって来た精霊たちは戸惑った顔で寝込んでいる青年のそばまで近づき、それから彼に手をかざして何かぽわぽわした光を送っていた。

 青年の全身を覆っていた瘴気が、だんだんと薄くなっていく。

 苦しそうに目を瞑って呻いていた青年が、ゆっくり目を開けた。
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